医学研究科 学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー(学位授与基準含む))

医学専攻

医学研究科は、生命現象の根本原理、病気の成因、病態の機構を解明し、その成果を先進的医療と疾病予防への発展に貢献するために必要な深い学識と高い研究能力に加え、基礎生物学から臨床医学・社会医学までを見通す広い視野を備えた人材を育成することが社会から期待されている。そうした人材を育成するために、本専攻博士課程では、4年以上在学して研究指導を受け、かつ分野科目で24単位以上、「大学院教育コース」で6単位以上を修得し、さらに査読のある国際的学術誌に筆頭著者として公表した原著論文についての学位審査に合格した者に、学位を授与する。ただし、評価の高い国際的学術誌に論文発表し、研究の着想、計画、実施、論文執筆にあたり本人の自発性が十分に発揮され、研究者としての基盤が確立されたことが確認できた場合には、3年又は3年半の修了のときに学位を授与することがある。

修了にあっては、以下の点に到達していることを目安とする。

  1. 医学分野の高度で幅広い専門的知識を習得している。
  2. 学術的意義、新規性、創造性等を有する研究を、高い倫理的責任感を備えて企画・推進・実施することができる。
  3. 高度な普遍性を持つ研究成果を論理的に説明できる。

医科学専攻

近年のライフサイエンスの発展により、医学・医療を取り巻く環境は大きく変革し、医学分野における教育・研究の内容も複雑・高度化している。特に、医師養成と基礎医学の研究を主目的とする伝統的な医学教育・研究に加えて、生命科学の飛躍的発展に伴い得られた膨大な情報を的確に処理し、いかにして有効かつ適切に実際の医療の現場に活かしていくかが課題となっている。また、医療現場では、患者の意識向上と相俟って、高度な機器を利用しての的確な診断が求められ、その診断技術や医療機器の研究開発が日々続けられているなか、高齢化社会の到来を控え、その進展に寄せられる期待は益々大きなものとなっている。こうした伝統的な医学の枠組みを越えた融合領域の創生とそれを担いうる研究者・教育者の養成は、研究教育の中核を担う大学に課せられた大きな使命である。

本専攻では、医学に対する社会的要請に応え、その使命を果たすべく、理学・工学分野等にバックグランドを持つ学生に対し、従来と異なる視点に立って医学に関する知識を教育することによって、既存の枠を越え、高度な専門的知識・技術と医学を結んだ新たな医科学の研究者・教育者を養成しようとするものである。

(以上、修士課程・博士後期課程共通)

そうした人材を育成するために、本専攻修士課程では、2年以上在籍し、指導教員の研究分野に所属し、演習・実習を通じて研究指導を受け、30単位以上修得し、修士論文の審査および試験に合格することを、学位授与の必要要件としている。

修了にあっては、以下の点に到達していることを目安とする。

  1. 医科学分野の基礎的知識及び専門に関連する知識を習得し、この知識を用いて高度な専門性を有する研究を計画することができる。
  2. 学術的意義、新規性、創造性等を有する研究を、高い倫理的責任感を備えて推進・実施することができる。
  3. 研究成果を広い視野を持ち論理的に説明できる。

そうした人材を育成するために、本専攻博士後期課程では、3年以上在学して研究指導を受け、かつ所要科目11単位(主科目7単位、副科目4単位)以上を修得し、さらに査読のある国際的学術誌に筆頭著者として公表した原著論文についての学位審査に合格することを学位授与の必要要件としている。

修了にあっては、以下の点に到達していることを目安とする。

  1. 医科学分野の高度で幅広い専門的知識を習得している。
  2. 学術的意義、新規性、創造性等を有する研究を、高い倫理的責任感を備えて企画・推進・実施することができる。
  3. 高度な普遍性を持つ研究成果を論理的に説明できる。

社会健康医学系専攻

社会健康医学系専攻の専門職学位課程では、原則2年以上在学し、かつ分野科目(課題研究を含む)で30単位以上修得することが学位授与の必要要件である。ただし、各特別コース・プログラムにおいては必須科目が別途定められている。課題研究については、配属された研究室で行い、研究のアイデアとそれに対応する研究のプロトコールの作成、データの収集と解析、結果の考察とを経験し、プレゼンテーションによる最終審査に合格することが求められる。

修了にあっては、「社会における人間」の健康や疾病に関わる問題を探知・評価・分析・解決する知識、技術、態度を有する高い素養を身につけるとともに、先端的課題の解決に取り組む総合的な能力および高い責任感、倫理性を備え、以下の点に到達していることを目安とする。

  1. 社会健康医学に関わる実務・政策・調査・教育において、専門的かつ指導的役割を果たすことができる。
  2. 人々の健康に関わる経済・環境・行動・社会的要因について知識を深め、新しい知識と技術を生み出すことができる。
  3. 生み出した新しい知識と技術を健康・医療に関わる社会の実践、方策と政策に還元できる。
  4. 社会健康医学に関わる優れた教養や各専門の知識と技術をもって、個人・組織・地域・国・世界レベルで貢献できる。

また特別コース・プログラムの特徴として、それぞれ以下の点に到達していることを目安とする。

【遺伝カウンセラー(GC)コース】(2年制)

先端医療に対応できる高度な専門的知識とコミュニケーション能力を持ち、患者・家族の立場を理解して遺伝医療におけるインターフェースとなる能力を身につける。

【臨床統計家育成(CB)コース】(2年制)
  1. 臨床研究の科学的な質を保つために必要な統計学基礎および臨床統計学を修めること。特に「臨床試験のための統計的原則(ICH E9ガイドライン)」について 十分に理解すること。
  2. 病院での臨床研究に関する実地研修を通じて、統計解析、データマネジメント等の実務を経験し、臨床統計家に求められる技術に習熟すること。
  3. 臨床研究の倫理的な質を保つために必要な知識・態度を身につけること。特に日本計量生物学会作成の「統計家の行動基準」について十分に理解すること。
【臨床研究者養成(MCR)コース】(1年制)

臨床研究を支える基本理論・知識・実践技術に習熟し、医療者としてのリサーチ・クエスチョンを解決するために、研究プロトコールの作成、研究の実施・マネジメント、データの解析、解釈、論文化を独力でできる(あるいは、適切な時期に専門家に適切な相談・照合ができる)。

【知的財産経営学プログラム】(2年制)

生命科学分野における知的財産経営、技術経営に関する問題解決能力、実践・実務能力、および、高度な専門性を身につける。
社会健康医学系専攻の博士後期課程では、3年以上在学して研究指導を受け、所定の単位を修得することが、求められる。所定の単位とは、本専攻専門職学位課程修了者以外の場合には、医療系出身は13単位、医療系以外の出身は19単位、そして本専攻専門職学位課程修了者は6単位である。さらに査読のある国際的学術誌に筆頭著者として公表した原著論文についての学位審査に合格することが、学位授与の必要要件である。
修了にあっては、「社会における人間」の健康や疾病に関わる問題を探知・評価・分析・解決するために必要な学術課題を考究する素養を身につけることが基本となる。また、研究課題を自ら設定でき、高度な学術研究を自立して実施できるとともに、先端的課題の解決に取り組む総合的な能力および高い責任感、倫理性を備え、以下の点に到達していることを目安とする。

  1. 社会健康医学に関わる実務・政策・調査・研究・教育において、高度に専門的かつ指導的役割を果たすことができる。
  2. 人々の健康に関わる経済・環境・行動・社会的要因について高度な知識を深め、新しい知識と技術を生み出すことができる。
  3. 生み出した新しい知識と技術を健康・医療に関わる現実社会の高度な実践方策と高度な政策に還元できる。
  4. 社会健康医学に関わる各専門の高度な知識と技術をもって、個人・組織・地域・国・世界レベルで貢献できる。

人間健康科学系専攻

医学研究科人間健康科学系専攻修士課程では、2年以上在学して教育理念・目標に沿った授業科目を履修して30単位以上を修得し、研究指導を受け修士論文を提出し、所定の審査に合格した者に修士学位を授与します。

高度実践助産学系では、61単位以上を修得し、研究指導を受け修士論文を提出し、所定の審査に合格した者に修士学位を授与します。

専門看護師課程(CNSコース)では、50単位以上を修得し、研究指導を受け修士論文を提出し、所定の審査に合格した者に修士学位を授与します。

なお、修了にあっては、以下の点に到達していることを目標とします。

  1. 人間健康科学の学術研究と臨床活動における高い倫理性と強固な責任感を備えていること。
  2. 人間健康科学に関する広範かつ深い学識を獲得していること。
  3. 高度先進医療の発展に不可欠な高度医療専門職としての看護師、保健師、助産師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、医学物理士、およびビッグデータ医科学の専門職・臨床研究開発管理の専門職をはじめとする総合医療の各領域の幅広い専門的知識を持っていること。
  4. 高度先進医療を受けた本人とその家族,高齢者に対して、高度な調査・研究能力と分析・判断能力に基づいた効果的かつ質の高い生活支援を提供できること。
  5. 新しい保健医療福祉システムの構築に寄与しうる高度でかつ学際的,革新的な解決策等を提示できること。

学位授与基準
修士論文の審査では論文が学術的意義、新規性、創造性、応用的価値を有しているかと学位申請者が研究の推進能力、研究成果の論理的説明能力、研究分野に関連する幅広い専門的知識、倫理性などを有しているかを複数の審査員により総合的に審査します。

医学研究科人間健康科学系専攻博士後期課程では、3年以上在学して教育理念・目標に沿った授業科目を履修して16単位以上を修得し、研究指導を受け博士論文を提出し、所定の審査に合格した者に博士学位を授与します。

なお、修了にあっては、以下の点に到達していることを目標とします。

  1. 人間健康科学の学術研究と臨床活動における高い倫理性と強固な責任感があること。
  2. 人間健康科学における高度な課題解決力と新たな価値の創出力があること。
  3. 人間健康科学に関する専門的に高度な識見と、深い学識を備え、先端的医療技術の開発・検証ができること。
  4. 先端看護科学、先端リハビリテーション科学、総合医療科学の発展に寄与できること
  5. 薬学・理学・工学・情報学・社会学・心理学分野等との学際的な研究に指導的立場で関与でき,学際領域を融合した新たな研究分野の開拓・推進ができること
  6. 人間健康科学における高度な学術研究能力・臨床活動能力と幅広い国際的視野をもち、成果を世界に向けて発信して海外との共同研究を推進できること
  7. 新たな学問分野への探求や技術改新を次世代に向けて先駆的に指導でき、体系的な教育活動ができること
  8. iPS 細胞療法、移植医療、遺伝子治療、再生医療などを深く理解し、先進医療の場でその発展に研究的視野を持って貢献できること
  9. 医療現場,保健や福祉の現場,社会生活の場などの臨床の場で、科学的根拠をもって提言ができ、多職種チーム内で中枢的指導性や統轄力を発揮できるスーパーコーディネーターとして機能できること
  10. 人間健康科学の基盤を有し、社会へ向け情報活動を行うとともに、「からだとこころの健康」を実現するための政策立案に参画できること
  11. 安心・安全・快適をテーマに製品開発を行うスーパーコーディネーターとして機能できること

学位授与基準
博士論文の審査では論文が学術的意義、新規性、創造性、応用的価値を有しているか、およびと学位申請者が研究の企画推進能力、研究成果の論理的説明能力、研究分野に関連する幅広い専門的知識、高い倫理性などを有しているかを複数の審査員により総合的に審査します。

京都大学・マギル大学ゲノム医学国際連携専攻(博士課程)

ゲノム医学国際連携専攻は、ゲノム医学に関する深い見識を持ち、今後の予防医学研究を主導できる人材を育成することが社会から期待されている。

そうした人材を育成するために、本専攻博士課程では、4年以上在学して両大学の教員から研究指導を受け、かつ両大学にそれぞれ1年以上滞在し、京都大学開設科目16単位以上、マギル大学開設科目12単位以上および両大学による共同開設科目2単位の合計30単位以上を修得し、各科目の成績評価の総平均点がB以上であること、さらに英文のthesis形式の学位論文について両大学合同で実施する学位審査に合格することを、学位授与の必要要件としている。
なお、修了にあっては、以下の点に到達していることを目安としている。

  1. ゲノム医学分野において、高度な知識に基づく研究能力と、高度な専門性を必要とする職業に従事するための能力を修得している。
  2. 学術的意義、新規性、創造性等を有する研究を、高い倫理的責任感を備えて企画・推進・実施することができる。
  3. 高度な普遍性を持つ研究成果を、国際学術言語である英語により論理的に説明できる。

医学研究科ディプロマ・ポリシー | 京都大学大学院医学研究科・医学部
 

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