理事ノート(2004年11月1日)

理事ノート(2004年11月1日)

本間 政雄

新採用職員の実地研修

今年度から新しい職員採用試験が導入されたことは周知の通りであるが、京大では法人化後の第1期生として事務系15名の採用を決めた。例年30~40名の採用を行っているので大幅な減少であるが、定員削減や効率化係数への対応もあるのでしばらくの間は止むを得ない。しかし、いずれ人件費の見極めがつけば近い将来増員もありうると思う。

今年の近畿地区の事務系職員の採用倍率は約54倍であった。これは京都大学では、公務員時代に比べて約10倍増ではないかと思う。大学職員の仕事が多岐にわたり、法人化を迎えて責任が増したことを地道に訴え続け、そのことが意欲ある若者の大量応募につながったものと自負している。

課題は、このように意欲も資質も高いこれら新採用職員をいかに育てていくかである。彼らがこれから配置されていく職場には、依然として意識が公務員時代のままの職員は少なくないし、大部分の職場で古い形の仕事のやり方が踏襲されている。「理事がいくら教員と事務職員は対等のパートナーと言ったってそんなに簡単に変わるはずはない」「京大のような古い組織は一朝一夕には変わらない」「自分ひとりががんばっても京大のような大きな組織は変えられない」そんな風に考えている職員も決して一部ではないだろう。

そういう職場環境の中に入っていく新人職員には、折に触れこのことは話してある。ぜひとも現実の壁にぶつかってもくじけることなく、大学を自分たちの手で良くしていくのだという気持ちをずっと持ち続けていってほしいと思う。

ともあれ、15名のうち7名がこの10月から採用になっている。既卒の人たちである。10月1日には、彼ら7名に加え、来年4月採用の8名、それに技術職員、図書系職員を加えて、大学の組織や法人化の仕組み、服務についてのガイダンスを行った後、私から1時間にわたって京大改革の現状について話をした。そして翌4日から4週間にわたる実地研修に入った。

この研修は、4週間の間に事務本部6部(総務、人事、企画、財務、情報環境、研究・国際)に全学共通教育機構事務部、病院事務部を各2、3日ずつ回り、部や課の業務の現状や課題について部課長から話を聞いたり、業務体験をしてもらい、広く高い視野から仕事を見ることの重要性を理解してもらうことを狙いとしている。実地研修2週間後と研修終了後に彼らから感想と評価、今後の改善点についてアンケートを書いてもらい、話を聞いた。

それによると、全員が研修は「(大変)有意義であった」とし、4週間の研修期間、研修内容についてもおおむね満足としている。一方、実地研修のあり方や内容については少なからぬ批判や改善提案が寄せられた。「部によって受け入れ態勢にばらつきがあり、趣旨を十分理解してプログラムを組み、課長自ら会議の内容を説明したり、理事との打ち合わせや学内の重要会議に陪席させ、議事録をとらせたりしたところもあれば、部長はもちろん課長から話しをすることもなく、現場に放り出して時間をもてあましていたところもあった。」「複数の課がある部の中には3日間1つの課だけに割り振られてしまい、全体が見えなかった」等々。

実地研修を十分な準備の時間がないまま導入したことが、こうしたばらつきにつながったのであるが、しかしきちんと趣旨を理解してプログラムを考えた部署もあったのだから、結局は各部がきちんと心を入れて取り組んだかどうかであろう。課によっては、研修担当を決めて研修生が時間をもてあましているような場合には進んで仕事の説明をしたり、話しかけたりというところもあったのである。忙しかった、準備の時間がなかったというのもあまり言い訳にならないような気がする。

部局事務での研修やキャンパス・ツアーを希望する声も多かったので、今後学生部、施設・環境部や図書館での研修も取り入れることを含めて研修の充実を考えたい。11月1日から、彼らは事務本部(総務課、広報課、企画課、財務課、研究協力課、国際交流課)に配置になる。よく鍛え、指導し、助言をしてやってほしい。