理事ノート(2004年9月27日)

理事ノート(2004年9月27日)

本間 政雄

国大協、国立大学財務・経営センターの研修事業の骨格固まる

法人化後の機動的・戦略的大学運営の核となる学長以下の理事、副学長、幹部事務職員の資質向上は、法人化の成否の鍵と言ってもいいほど重要な課題である。率直に言って、人事・労務担当理事だ、財務担当理事だと言っても、内実は実務の経験はもちろん基本的な知識すら不十分なまま日々の業務を何とかこなしているというのが実情であろう。

国立大学では教員出身の理事が大半を占めているが、教育・研究あるいは診療を続けながら管理運営の実務に携わっているものも少なくないと思われる。事務局長出身の理事にしても、国家公務員として護送船団方式の国立大学の管理運営に携わっただけで、公務員制度から離れ、文部科学省の庇護から離れた大学運営は初めての経験である。部課長などの幹部事務職員に至っては、未だに意識転換すらできておらず、従来どおりの人任せ、前例踏襲という発想、行動様式で仕事をしている人の方がはるかに多い印象だ。

これでは法人化がめざす自主的・自律的で企業的発想に立った大学運営など画餅に帰するおそれがある。国立大学は、国立大学法人の制度設計に当たって可能な限り政府の干渉を排除するべきだと主張し、現実に多くの点で主張が認められた。法人化後、文部科学省は何かにつけ「それは大学の判断だ」「大学の責任で決めればいい」と突き放した対応をしており、ある意味では責任放棄ととられかねないほどである。国立大学の側で自律性、自主性を主張した以上、やってみたらできませんでした、では通らない。人件費の管理、国立大学にふさわしい人事制度の構築、財務・経理事務などの合理化、各種のリスク対応、訴訟、教育研究組織の再編成と必要な資源の再配分、外部資金の獲得、資金運用、他大学との連携協力、海外拠点の構築などなど自らの力、自らの責任において行っていかなければならない。

国大協では、私が委員長を務める研修企画小委員会、親委員会の事業実施委員会で検討を重ね、ほぼ内容を固めた。まもなく国大協から各国立大学に概要に関する連絡が行くことになろうが、学長、理事、部局長、幹部事務職員向けの分野別「大学マネージメントセミナー」を柱とし、「高等教育のグランドデザイン」「科学技術基本計画」などをテーマにした「大学改革セミナー」、新任部長、新任課長・事務長などを対象にした階層別の「一般・専門研修」を行うことになった。

「大学マネージメントセミナー」は、国立大学財務・経営センターと協力し、同センターが実施する「大学財務・経営セミナー」と連続して行うことになった。16年度は2005年1月24日から28日まで東京・一ツ橋講堂で、「広報・渉外」「企画・評価」「総務」「人事・労務」「財務・会計」という5分野について、1日1テーマについて4ないし5コマの講義を行うことになった。内容は、「人事・労務」であれば、「人事管理の基礎」「労働関係法令の基礎と実際」「民間における能力開発・採用・退職管理の理論と実際」「外国における教職員の人事管理・業績評価の実際」といった科目から構成する。他のテーマについても可能な限り、理論と実際を学ぶことができ、研修の翌日から仕事にヒントを与えてくれるような実戦的な内容をめざすことにしている。偉い学者のご高説を拝聴する式のものは行わない。テーマはほぼ各理事の役割分担に即するよう考えてあるが、いくつかの分野を兼ねる理事、幹部職員は2ないし3のテーマを聞いてもいいし、トップの学長であれば5日間続けて聴講していただいてもいい。ハーバード大学が行う「学長向けセミナー」は数ヶ月間連続して大学運営のありとあらゆる側面を網羅して行うようであるが、国大協はまだそこまで行くことができない。今後の課題である。

この他、国大協では「教学マネージメントセミナー」と題して、「国際交流」「教育・学生支援」「研究支援・産官学連携」について各1日ずつの研修を2月21日から23日まで東京医科歯科大学講堂で、新任部長、新任課長・事務長研修をそれぞれ2月3・4日、2月9・10日やはり東京医科歯科大学で行う予定である。科目の詳細はこれから検討に入るが、「実戦的」という基本コンセプトは変わらない。関係者の方々、とりわけ学長などのトップにはぜひ今から日程を押えていただいて積極的に参加をお願いしたい。遠方から時間とお金をかけて参加していただいて後悔のないような意味ある研修内容にしたいと考えている。何かの都合で参加できない人のためにSCSの活用や研修教材やレジュメの配布なども検討したいと思う。