京都大学メールマガジン Vol.59

京都大学メールマガジン Vol.59

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京都大学メールマガジン Vol.59
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目次:
◆巻頭言:研究担当理事・副学長 吉川 潔
◆チーム「TBT」 代表者ほか
◆大学の動き
◆研究成果
◆イベントのお知らせ
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◆巻頭言:研究担当理事・副学長 吉川 潔

   京都大学は「研究を目的」とする我が国で2番目の帝国大学として1897年に千年の文化が蓄積された、しかも行政都市の東京から離れた、静謐な都市京都に設立され、その後の光彩を放つ学術成果に培われた歴史を振り返りますと、確かに学術研究の発展には最適の土地であったと感じます。事実、高等中学校の誘致の条件として、文部省へ寄付された京都府の寄付金額10万円は、実に当時の府税収入の2割に当たり、今と変わらぬ京都府民の熱意が伝わります。さらに、現在の本部のある地区は、当時の文部大臣森有礼が実地見分し、その水の良さと静けさにいたく感銘されたとも伝えられています。

   そのような背景・環境を持つ京都大学の研究をさらに大きく発展させるため、皆さんの協力を得ながら、様々な研究推進活動を行っているわけですが、特に、近年の、例えば、大学世界ランキングといった国際化による競争激化、ならびに、日本国の膨大な負債による高等教育、科学技術への投資の停滞・減少が大きな関心事となっています。
大学は多様性を特長とする知と創造の源泉であり、また、次世代を担う人材が人類の将来を切り拓く礎を築く場所であります。国立大学の法人化後、社会から、大学はますます個性化、国際化が要請され、社会の革新の牽引車の役割を期待されています。
すなわち、資源の少ない、かつ狭隘な国土にあって、日本が今後とも世界をリードしていく「輝ける国」となるためには、人的資源を十二分に活用した、先端科学技術に立脚した国作りが不可欠であると考えます。

   しかしながら、3月11日に生じた未曾有の東日本大震災、大津波、ならびに原発事故により、従来の学術研究基盤・活用体制の脆弱さが一挙に現れました。
   特に、天災に加えて人災も加わった福島第一原発事故に対しては、「原子力村」という言葉で代表される「ムラの論理」以外は無視するという、今となっては取り返しのつかない原子力体制がまかり通っていたことが露呈したわけです。(例えば、平成23年4月7日付け毎日新聞「風知草」には、「津波がはぎ取ったものは三陸の町や港だけではない。無力なのに盤石を装ってきた原子力行政の虚妄。・・・」と書かれています)

   今回の大震災で顕在化した様々な学術基盤・体制の脆弱さを強固なものとし、科学技術創造立国を標榜する我が国の学術に対する高い信頼を再構築することは喫緊の課題です。そのためには、学術に携わる者すべてが、想定のできない自然の力に対する畏敬と謙虚さを今一度十二分に再認識した上で、最先端の学術研究を推し進めるべきであり、「ムラの論理」に左右されない大学人が今こそその学術成果を世の中に強力に発信することが最も重要ではないかと考えております。


◆チーム「TBT」: 秋柴俊之※、上杉晃生※、片山拓※、北村彰男※、岡崎佑哉※※(※工学研究科マイクロエンジニアリング専攻 ナノ・マイクロシステム工学研究室(田畑研)修士一回生、※※工学研究科機械理工学専攻 分子流体力学研究室(青木研)修士一回生)

   私たちマイクロエンジニアリング専攻ナノ・マイクロシステム工学研究室(田畑研)の4回生有志で結成されたチーム「TBT」は、このたび、仙台で開催された第2回国際ナノ・マイクロアプリケーションコンテスト日本予選に出場し、1位を受賞しました。このコンテストはMEMS(微小電気機械システム)を用いたアプリケーションを提案し、試作した成果を競うものであり、日本、中国、アメリカ、ドイツ、台湾、香港など21の国と地域で予選を行い、2011年6月に北京で世界大会を行います。出場対象者は高校生、高専生、専門学校生、大学生、大学院生です。



指文字翻訳機TEMS

    作成したアプリケーションは手話で使われる指文字を認識し、音声に変換する装置で、指文字翻訳機「TEMS (Talking Equipment from Manual Sign)」と名付けました。この装置はMEMSの加速度センサと磁気センサを組み合わせることで指の形を判別し、対応する音声に変換するものです。これにより、聴覚障害のため言葉を発することが不自由な方が、手話を知らない人に意思を伝えることができます。このアプリケーションは社会への貢献が期待されており、昨年末に毎日新聞の1面でも取り上げられました。

   指文字は視覚言語の一つで、手話学習の第一歩といわれています。一つの音に対して一つの右手の形が割り振られています。通常手話では腕や手のひとまとまりの動作に意味をもたせた手話単語を用いて意思を伝えますが、手話単語にない固有名詞や地名などを表現する際に指文字が使用されます。さらに日本語では、ひらがな一つ一つの文字に対してそれぞれの指文字が存在するので、一音一音表現することで単語だけでなく少し高度な文章を表現することも可能です。


今後の展望

   6月に行われる世界大会は、これからの活躍が期待されている各国の同世代の人たちと同じステージで競い合うことができる貴重な機会である、と楽しみにしています。指文字翻訳機はまだまだ課題も多いですが、その分改善の余地が残っています.研究室の先輩方や国内予選のときに審査員の方々からいただいたアドバイスを参考にして更なる改良を加え、世界大会でも好成績を残せるように頑張ります。



◆大学の動き◆

○シンガポール国立大学で第1回APRU Provosts Forumが開催されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110427_2.htm 

○大阪京大クラブ5月見学例会が開催されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110514_1.htm

○松本紘総長が京京会(中国・北京地区京都大学同窓会)に出席し会員と意見交換を行いました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110423_2.htm

○小森悟 副理事・工学研究科長が清華大学深セン研究生院創立10周年記念式典に参加しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110515_1.htm

○サウジアラビア・リヤドで「International Exhibition and conference on Higher Education 第2回国際高等教育フェア(IECHE2011)」および第2回サウジアラビア-日本・大学学長会議が開催されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110422_1.htm

○総合博物館がベトナム科学技術アカデミー生態学生物資源研究所と部局間学術交流協定を締結しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110509_2.htm

○「大規模自然災害対策・復興 全学大会議」を開催しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110428_1.htm

○工学部高分子化学科第1期生が同窓会を開催しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110424_1.htm

○先端技術グローバルリーダー養成プログラム第四期生修了式を挙行しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110325_1.htm

○栄誉
・河野昭一名誉教授が第21回南方熊楠賞を受賞しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110507_1.htm


◆研究成果◆

○チンパンジーの自己認識に関する新しい発見
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110519_1.htm

○細胞内G蛋白質シグナルの仕分けが生体リズムのタイミングを決める
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110525_2.htm

○植物有用物質生産のための微生物プラットホームの確立
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110525_1.htm

○京都大学と富士通が共同でエネルギーマネジメントの実証実験を開始~スマートコンセントを利用した省エネの研究~
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110517_2.htm

○炎症機構の新たな役割の発見-癌や心臓病など、炎症の関わる疾患の創薬・治療法開発に期待-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110518_1.htm

○炭化珪素バイポーラトランジスタで世界最高の電流増幅率を実現~SiC BJTによる超低損失パワーエレクトロニクス実現に向けた大きな一歩~
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110517_1.htm

○衆議院の新会議録作成システムにおける京都大学の音声認識技術の導入
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110512_2.htm

○イオンを利用して細胞の外に蛋白質を運ぶメカニズムを初めて解明-原子レベルの膜タンパク質の構造から見えてきた仕組み-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110512_1.htm

○筋ジストロフィーに対する新しい低分子治療薬候補物質を発見
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110511_1.htm

○成体脳におけるニューロン新生は先天的な匂い応答に必要
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110503_1.htm

○海洋バイオマスからバイオエタノール生産
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110428_1.htm

○せっけんに学ぶ高分子太陽電池高効率化の原理の解明 -新概念の「色素増感高分子太陽電池」の実現に貢献-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110427_1.htm

○脂肪酸受容体GPR41によるエネルギー調節機構の解明
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110426_1.htm


◆イベントのお知らせ◆

○平成24年度大学院薬学研究科入試説明会
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110618_1.htm

○NPO法人 花山星空ネットワーク 第7回 講演会
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110605_1.htm

○理学部地球惑星科学系ウェゲナー祭2011
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110610_1.htm

○レクチャーシリーズno.91 ジュニアレクチャー「植民地と環境保護-100年前の朝鮮半島の森林植生図-」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110611_2.htm

○京都大学学際融合教育研究推進シンポジウム -融合・連携の本質-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110318_2.htm

○中韓日シンポジウム アジアにおけるPISA問題
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110614_1.htm

○京都大学未来フォーラム(第48回)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h8/d2/news4/2011/110615_1.htm

○第175回 生存圏シンポジウム
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110616_2.htm

○第180回 アフリカ地域研究会
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110616_3.htm

○人文研アカデミー 連続セミナー「生命・差異・表象」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110721_1.htm

○女性研究者支援センター シンポジウム「シリーズ 私の仕事とキャリアデザイン3 独法研究機関で働くということ」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110617_1.htm

○アクチュアリー会特別講演会
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110617_2.htm

○平成23年度 京の府民大学 2011年4月~2011年9月 アフリカ地域研究資料センター公開講座 創立25周年記念シリーズ 「アフリカ研究最前線:生きる」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110917_1.htm

○京都大学微生物科学寄附研究部門主催シンポジウム 「微生物科学研究の現状と展望」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110623_1.htm

○京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻ローレンツ祭2011
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110624_2.htm

○世界の友達と交流できる! パンゲア アクティビティ
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110625_1.htm

○2011年親子理科実験教室(春~夏コース)[連続5回]
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110925_1.htm


>>その他のイベント情報はこちらをご覧ください。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja?type=monthly&;c2=1


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