京都大学メールマガジン Vol.61

京都大学メールマガジン Vol.61

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京都大学メールマガジン Vol.61
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目次:
◆巻頭言:国際交流推進機構長 森純一
◆総長メッセージ「人々との出会い(5)」
◆修士課程1回生シリーズ/教育学研究科修士課程1回 野崎優樹
◆大学の動き
◆研究成果
◆イベントのお知らせ
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◆巻頭言:国際交流推進機構長 森純一

グローバル人材を育てる

 「グローバル人材」という言葉を新聞紙上やウェブで見る機会が多くなりました。本年4月には文科・経産両省が事務局を務めた「産学人材育成パートナーシップ グローバル人材育成委員会」が報告書「~産学官でグローバル人材の育成を~」をとりまとめ、6月には日本経済団体連合会が、「グローバル人材の育成に向けた提言」を、また7月には内閣官房長官が議長を務め、外務、文科、厚生労働、経済産業、国家戦略担当大臣からなる「グローバル人材育成推進会議」が同会議の「中間まとめ」を発表しています。

 グローバル人材という言葉は昨年の6月に政府が発表した「新成長戦略」に謳われたもので、上記三つの提言も、その流れに沿うものでしょう。では、グローバル人材とはどのような人材を意味し、政府・経済団体からの多くの提言の背景には何があるのでしょうか。

 上記三つの提言では、グローバル人材の資質として、主体性・積極性、チャレンジ精神などの社会人としての基礎力に加えて、外国語でのコミュニケーション能力を持ち、異文化理解と活用力を持つことを挙げています。また、グローバル人材についての提言が増えている背景には、日本が本格的にグローバル化に巻き込まれたことがあるでしょう。21世紀に入っても停滞から抜け出せない国内経済、海外への生産・研究拠点の移転、また東日本大震災でより鮮明になった国際協力の必要性など、日本はこれまでにない対応をもとめられているのでしょう。

 「内向きの若者」とよく言われますが、「中間まとめ」をはじめいずれの報告書も、このような見方には否定的です。むしろ日本国内の制度的な障害が、若者の海外志向を阻害しているという見解を取っています。これらの障害を取り除き、グローバル人材育成を強化促進する方向のなかで、大学への期待も述べられています。それらには従来の大学制度に大きく切り込むものも含まれています。たとえばバランスのとれた語学力や海外体験を評価できる入試制度です。また最近、日本経済新聞に取り上げられた国際基準に近づく秋期入学やギャップイヤーの検討なども含まれています。

 京都大学でもこれまでから、どのような人材を育てるかについて議論を重ねてきましたが、大学を取り巻く環境変化は一段と加速しており、我々として改めてどのような人材を育てるのか、一層の議論が求められているように思います。来る9月の京都大学全学教育シンポジウムでも議論が盛り上がることを期待しています。


◆総長メッセージ「人々との出会い(5)」:松本紘

 しばらく私がこれまでの人生で出会った人々についてのお話をお休みさせていただいておりましたが、今号から再開させていただき、今回は高校時代の前半について振り返ってみたいと思います。

5.高校時代前半の思い出

 高校は中学校の先生の勧めもあって、県立の郡山高校でなく国立の奈良女子大学附属高校を受験することとなりました。附属高校は当時、東大寺学園もまだなく、近畿一円でも難関の進学校とされ、奈良県内だけでなく、京都、大阪、滋賀、和歌山など他府県からも多くの駿才が受験していました。新入生150名のうち、附属中学校3クラスの中から2クラス100名を試験で選抜し、残り50名は他の中学校の受験生から選抜するというシステムをとっていました。

 入学してわかったことですが、他の中学から入学した50名は外様と見られ、附属中学から進学した譜代、同じようなシステムで附属小学校からずっと進学してきた大譜代の生徒とは、どこか目に見えないギャップがあったように感じました。忘れもしないのは、1年生で最初に高校へ行ったとき、学生帽を斜にかぶった譜代組の体の大きい生徒が廊下の壁にもたれかかり、足を投げ出すようにして外様組に足掛けの意地悪をしたりしていました。私は気にもしませんでしたがそれで滅入る子もいたようです。

 1年生で最初に出会った英語の先生は、奈良女子大学を卒業されたばかりの、英語の発音がアメリカ人並みの帰国子女の先生でした。私を含めて多くの男子生徒はその先生にあこがれたものです。あこがれの先生から夏休みに満点を続けるようにという葉書をもらって、有頂天になって英語の勉強に身が入ったことを覚えています。しかし、秋には高校を突然退職され、随分がっかりしました。奈良女子大学附属高校の先生方は大学教員と遜色のない研究も行っておられました。いわゆる大学受験のための指導はほとんどされず、たとえば日本史は、面白い江戸時代の逸話などを授業中にたくさん紹介され、結局、明治以降の歴史の授業を受けずに大学受験に向かったように記憶しています。体育は相変わらず苦手でしたが、2年生の秋の体育大会では、必ず何か陸上競技に参加する決まりでしたので、短距離は苦手、長距離はしんどい、と思って800m競走を選び、郡山小学校のグランドで練習をしてみましたが、練習はとてもきつかったです。しかし、練習の成果か、本番では今まで見たこともない光景が目に飛び込んできました。なんと前に走者がいないのです。小学校以来、前を走る集団の後塵を拝してゴールまで辿り着いてばかりであった私だったからです。結局最後は野球部の子に抜かれましたが、2位となり、やればできるんだ、とはじめて知った瞬間でした。

(次号へ続く)


◆修士課程1回生シリーズ/教育学研究科修士課程1回 野崎優樹

 今年の4月より京都大学大学院教育学研究科に進学した野崎と申します。

 私は教育認知心理学講座に所属しています。心理学を専攻することに決めた理由は、これからの社会において、さらなる発展が望まれる分野だと考えたためです。科学技術の進歩により多くの新しいことが可能になってきた一方で、今後はこれらの科学技術を使う側である人間の成長がより一層問われる時代が来ているのではないかと思います。人の心や行動は様々な影響を受けるため、複雑な面を明らかにしていくのは難しい部分も多いのですが、だからこそやりがいも大きいと感じています。

 今後は、人間的な成長の一側面として情動知能に着目し、研究を進めていく予定です。情動知能は、自己と他者の情動を認識して区別し、思考や行動に活かす能力と定義される概念で、最近はEQとして日本でも注目されてきています。情動知能を高めるためには、どのような経験や要因が必要なのかを明らかにし、最終的には情動知能を高める教育方法の確立を通して、社会に貢献できる研究者になりたいです。

 現在は、情動知能を高める要因としてストレス経験からの成長に着目しています。ストレス自体は、私達に負の影響を与えるものですが、そこに対して適切に対処し乗り越えることにより、自身の向上や他者の受容などの成長につながることが明らかになっています。ストレス経験に対処する際に、情動をコントロールしようとする経験が、情動知能の発達につながるのではないかと考え、様々な角度から研究を進めていこうとしています。

 学ぶべきことは数多くありますが、大学院では広い視野を身につけながら、専門性を磨いていきたいと思います。そして、社会に貢献できる研究者を目指して日々研究を進めていこうと考えています。



◆大学の動き◆

○Kyoto University Research Activities 2011を刊行しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110720_1.htm

○京都ユニオンクラブメンバー(タイ)とミーティングを行いました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110702_1.htm

○マレーシア人同窓会設立に向け動き出しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110630_2.htm

○マレーシア日本人同窓会との意見交換を行いました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110629_2.htm

○総合博物館 特別展「花の研究史-京都大学の植物標本-」を開催中
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110715_1.htm

○iPS細胞技術に関する特許1件が欧州で成立
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110711_1.htm

○経営管理大学院の学生がトルコ・コッチ大学にてチャリティーを実施しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110513_1.htm

○京都大学交流会を開催しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110703_1.htm

○北海道京大会同窓会が開催されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110701_1.htm

○名誉教授懇談会を開催しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110624_1.htm

○医学部附属病院「先端医療機器開発・臨床研究センター」竣工記念式典を挙行しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110629_1.htm

○第62回京都大学・東京大学対校競漕大会が開催されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110626_1.htm

○経済学部昭和36年卒業生・卒業50周年記念同窓会が開催されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110530_3.htm

○総長主催「外国人留学生歓迎パーティー」を開催しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110615_3.htm

○「国際ナノ・マイクロアプリケーションコンテスト」で京都大学チームが1st Prizeを受賞しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2011/110606_1.htm


◆研究成果◆

○もやもや病感受性遺伝子の特定とその機能についての発見
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110721_1.htm

○京都大学が開発した「判定サーチ」が「Yahoo!ラボ」にて公開
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110719_3.htm

○癌遺伝子情報伝達経路の実測データに基づくシミュレーションモデルの構築~コンピューターによる抗癌剤デザインに向けて~
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110719_1.htm

○進行期メラノーマに対する樹状細胞を用いた免疫療法~進行期メラノーマ患者に朗報~
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110719_2.htm

○鳥類の音声における文法規則の神経コーディングの解明
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110715_1.htm

○新たな残留性有機汚染物質「短鎖塩素化パラフィン」が中国の食品中で急増してきていることを発見-越境汚染の可能性を示唆-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110711_1.htm

○チンパンジーによる同種の他個体の行動を手掛かりとした見本合わせ課題:2台のコンピュータ連結で可能になった完全自動検査環境の確立
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110704_1.htm

○人工超格子での酸素イオン拡散の制御に成功-固体燃料電池や酸素貯蔵材料の開発へ向けた新展開-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110701_1.htm

○産学官連携により、革新的な放射線蛍光プラスチック(商標名「シンチレックス」申請中)の開発に成功~安価で高性能な放射線検出器の製造に大きく前進~
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110629_1.htm

○鳥類の音声シーケンス情報処理能力の解明
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110627_1.htm


◆イベントのお知らせ◆

○第34回 こころの未来セミナー「悲嘆へのさまざまな道のり」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110726_1.htm

○京都大学シンポジウムシリーズ 「大震災後を考える」 -安全・安心な輝ける国づくりを目指して-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110714_1.htm

○学術情報メディアセンターセミナー 「多様な情報を活用した統計作成」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110726_2.htm

○日本学術会議近畿地区会議学術講演会「世界の目から見た日本の大学評価」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110730_4.htm

○若い人に贈る福井謙一先生ノーベル化学賞受賞30周年記念公開講座 -最近の基礎化学の進展-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110730_3.htm

○公開シンポジウム「女性らしさ」の冒険-「愛しい母」ヤスミン・アフマドの思い出とともに
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110731_3.htm

○学術情報メディアセンター 先端的大規模計算利用サービス(民間機関利用)2011年度第2期公募説明会
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110803_1.htm

○体験授業「放射線って何だろう?」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110805_2.htm

○第15回品川セミナー 「レーダーを使って大気を測る-信楽とインドネシアからの研究紹介-」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110805_1.htm

○平成23年度 第3回 花山天体観望会 「月」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110806_5.htm

○京都大学理学部九州講演会
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110806_2.htm

○シンポジウム「理数離れと日本の危機」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110806_6.htm

○飛騨天文台 一般公開2011
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110806_4.htm

○京都大学ジュニアキャンパス「特別協賛ゼミ」 京都大学大学院情報学研究科平成23年度公開講座 「ここまで来た情報処理」 -画像、音声などをかしこく処理する方法-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110812_1.htm

○京都府・京都大学こころの未来研究センター 共同企画 第10回こころの広場「進化とこころ~「こころ」も進化した?」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2011/110821_1.htm

>>その他のイベント情報はこちらをご覧ください。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja?type=monthly&;c2=1


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