研究成果

腕の自由自在な動きをつくりだす多機能な神経細胞群の発見 -運動の方向と大きさを同時にコントロールする神経メカニズムの解明-


2020年10月14日


     武井智彦 白眉センター特定准教授、Amit Yaron 国立精神・神経医療研究センター研究員、David Kowalski 同訪問研究員、関和彦 同部長は、自由自在な動きが特徴の霊長類の手や腕が、脊髄にある多機能な運動細胞群によってコントロールされていることを発見しました。

     私たちの神経系による運動制御について、「運動モジュール」仮説が広く認められています。これは、神経系は脊髄にある少数の神経細胞群(運動モジュールと呼ばれる)を組み合わせて制御しているという仮説です。この仮説はこれまでカエルを中心にその証拠が示されてきましたが、ヒトを含めた霊長類においては証明されていませんでした。

     本研究グループでは、上記のカエルを対象とした先行研究の実験手法を応用して、マカクサルの脊髄においてこの「運動モジュール」を同定する方法を開発しました。つまり、腕の運動に関わる脳からの信号を筋肉に伝える中継点である脊髄に多数の刺激電極を埋め込み、電気刺激とそれによって引き起こされた筋肉の活動の関連性の分析から、「運動モジュール」に相当する神経細胞群を発見する方法です。そして、この方法を用いて霊長類の脊髄に初めてその神経細胞群を発見しただけでなく、カエルと異なり霊長類の「運動モジュール」は運動の方向と大きさを別々に制御し、かつ同時にできることを発見しました。本研究は霊長類の手や腕の運動制御メカニズムを解明しただけでなく、その異常にともなう様々な運動障害の解明やリハビリへの応用、また効率的なロボットハンドの制御など様々な社会的波及効果があると考えられます。

     本研究成果は、2020年10月13日に、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要 ) 」のオンライン版に掲載されました。

    図:本研究のイメージ図(イラスト:Amit Yaron、NCNP)

    詳しい研究内容について

    書誌情報

    【DOI】 https://doi.org/10.1073/pnas.1919253117

    【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/255585

    Amit Yaron, David Kowalski, Hiroaki Yaguchi, Tomohiko Takei, and Kazuhiko Seki (2020). Forelimb force direction and magnitude independently controlled by spinal modules in the macaque. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America.


    腕の自由自在な動きをつくりだす多機能な神経細胞群の発見 -運動の方向と大きさを同時にコントロールする神経メカニズムの解明-
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