マダガスカルで“種子を埋めるネズミ”を初確認―森を作る担い手としての新たな可能性―

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 ネズミなどの齧歯類が、将来の食糧として植物の種子を森のあちこちの地中浅くに埋める「ばら撒き貯食」は、世界中の様々な生態系で確認されており、森林更新において種子の散布や発芽を助ける重要な行動特性といわれています。しかし、独自の動植物相を有し、生物多様性ホットスポットであるマダガスカルでは、これまで齧歯類によるばら撒き貯食行動は確認されていませんでした。

 大河龍之介 アジア・アフリカ地域研究研究科一貫制博士課程学生、佐藤宏樹 同准教授、北島薫 農学研究科教授らの研究グループは、マダガスカル北西部の熱帯乾燥林で、自動撮影カメラを用いて齧歯類による植物の果実や種子の持ち去りを調べました。調査の結果、マダガスカル固有種の齧歯類が約15種もの植物種の果実や種子を親木の下から持ち去り、一部の種子を貯食することを明らかにしました。

 この成果は、マダガスカルの森林生態系において、これまで見過ごされてきた齧歯類の種子散布者としての役割を示唆する重要な発見です。

 本研究成果は、2025年11月30日に、国際学術誌「Biotropica」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
種子の貯食行動が観察された齧歯類:オオアシナガマウス(Macrotarsomys ingens
研究者のコメント
「マダガスカルではこれまで誰も観察したことがないネズミの貯食行動について、手探りで調べ始めた研究です。自動撮影カメラの映像からネズミが種子を埋める様子を初めて見たときは、新たな動物の生態を発見したことに興奮し、胸が高鳴りました。新たな生物種や生態の発見といった基礎的な知見の積み上げは、生態学の醍醐味だと改めて実感しました。」(大河龍之介)
研究者情報
研究者名
大河 龍之介
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1111/btp.70134

【書誌情報】
Ryunosuke Okawa, Kaoru Kitajima, Jean de la Croix Rakotoarimanana, Hiroki Sato (2026). Seed and Fruit Removal by a Native Rodent in a Seasonally Dry Forest in Northwestern Madagascar. Biotropica, 58, 1, e70134.