村上隆亮 医学研究科助教、大谷大輔 同医員、矢部大介 同教授、稲垣暢也 名誉教授らの研究グループは、インスリン(血糖値を下げるホルモン)をつくる膵β細胞が増えるための新しいしくみを解明しました。糖尿病ではこの細胞が減ってしまい、どうすれば膵β細胞量を回復できるのかが大切な課題です。本研究では、細胞の中でタンパク質の異常に対応する「小胞体ストレス応答」に関与するATF6αという分子に注目しました。マウスを用いた解析により、ATF6αは膵β細胞にストレスがかかる状況(高脂肪食や妊娠)で細胞が生き延びて増えるのに必要であることが明らかになりました。さらに、シングルセルRNA解析の結果、ATF6αがない膵β細胞は高脂肪食のストレスによって「増えにくい細胞状態」になりやすい可能性が示されました。
この成果は膵β細胞量が変化するしくみを理解する上で重要な発見であり、将来、膵β細胞量を保護・回復する新しい糖尿病治療法への応用につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年4月17日に、国際学術誌「Diabetes」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「慢性ストレス下の膵β細胞において小胞体ストレス応答関連分子が『生存』『増殖』の両立をもたらすという新たなしくみの一端を解明し、膵β細胞量の回復をもたらす新しい糖尿病治療への可能性を示せたことは大きな一歩です。今後、このしくみの詳細をさらに解明し、糖尿病の根治を視野に入れた革新的な治療法開発への取り組みを進めます。」(村上隆亮)
【DOI】
https://doi.org/10.2337/db26-0048
【書誌情報】
Daisuke Otani, Takaaki Murakami, Muhammad Fauzi, Ainur Botagarova, Sho Sekito, Hisato Tatsuoka, Shinsuke Tokumoto, Ryota Usui, Masahito Ogura, Taro Toyoda, Yasuhiro Murakawa, Daisuke Yabe, Nobuya Inagaki (2026). Activating Transcription Factor 6α Governs Stress-Adaptive Pancreatic β-Cell Mass Expansion by Coordinating Proliferation and Survival. Diabetes, db260048.