細胞内相分離が制御する組織ダイナミクス―三細胞結合点の物性が多細胞生物の形作りを支える―

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 上地浩之 薬学研究科准教授(研究は東北大学学際科学フロンティア研究所でも実施)らの研究グループは、細胞内相分離(水と油が分離するように、生体高分子がダイナミックに区画化することで分子会合体や細胞内小器官を形成する現象)が、上皮組織の形態形成を適切に導くことを明らかとしました。上皮組織は細胞膜上の細胞間接着分子群により、バリア機能と協調した細胞運動性を獲得します。なかでも3つ以上の細胞が接する「三細胞結合点」には、特定のタンパク質が局在し機能することが知られていますが、特異な分子局在や生理機能を発現するしくみは不明でした。本研究ではショウジョウバエ上皮形態形成の生きたままの観察と、試験管内再構成実験により、三細胞結合点のSidekickと呼ばれる接着タンパク質が相分離しゲルのような流動性の低い液滴様構造になること、これが形態形成の動的な場でも三細胞結合点への安定な分子局在を維持し、形態形成を駆動する関連分子の適切な分布を担保していることを見出しました。本研究成果は、多細胞の協調した振る舞いを構築する生体分子の生理的状態の理解を深めるものです。

 本研究成果は、2026年4月30日に、国際学術誌「Cell Reports」に掲載されました。

画像
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(左)Sidekickタンパク質の試験管内における液滴様構造。光褪色(各構造の上半分)後の輝度値回復の様子から、Sidekickの野生型では流動性の低いゲル様構造であり、変異体は流動性が高いことが分かる。スケールバーは5µm。(右)生きたショウジョウバエの上皮組織におけるSidekick(緑)とミオシン(マゼンタ)の分布。Sidekickは三細胞結合点に、ミオシンは細胞接着の境界と細胞表層に分布する。変異体を導入した上皮では形態形成中にこれら分子の分布に異常をきたした。スケールバーは10µm。画像は論文中のものを改変。

研究者のコメント

「細胞内相分離は、細胞内や組織内における生体高分子の振る舞いを記述する、比較的新しく発見された現象です。生体内にどのような分子が存在するかはよく分かってきましたが、それらを混ぜても生物はまだ創れないことを鑑みるに、分子の生体内における状態も理解することが重要です。細胞内相分離のような、生体分子が細胞内の環境で創発的に示す動態を追究することで、生命の本質に少しでも近づけるのではないかと思い研究しています。」

研究者情報
研究者名
上地 浩之