夏の良く晴れた日、湖沼の水面が抹茶のごとく緑色の粉をまいたようになる「アオコ」現象は、富栄養化した湖沼で世界的に広く見られます。アオコは、植物プランクトンのうち「ラン藻」あるいは「シアノバクテリア」と呼ばれる生物が大量に増殖したものです。わが国では、高度経済成長期に全国の主要な湖沼が富栄養化して、アオコは深刻な環境問題となりました。アオコが発生すると、景観の悪化、強い悪臭、水処理におけるろ過障害などの問題が生じます。そして最も深刻な問題として、アオコが人や家畜に有害な毒素を生産することが挙げられます。このことから、アオコ問題は現在もなお、米国や欧州などの先進国だけでなく、アジアやアフリカの発展途上国でも、深刻かつ喫緊に解決すべき環境問題です。
2024年7月中旬、中国・雲南省・昆明に、中野伸一 生態学研究センター教授を含む世界各地の主要なアオコ研究者が集まり、「将来のアオコ研究をどう進めるか?」についてワークショップが開催され、今後の5か年研究計画をとりまとめました。研究グループの構成員は、さまざまな国、分野、キャリア段階を考慮し、世界12か国(中国、カナダ、ドイツ、米国、オーストリア、韓国、ニュージーランド、デンマーク、オーストラリア、日本、オランダ、ケニア)から23人の研究者が集められました。日本からは、中野教授一人が参加しました。
本研究成果は、2026年6月2日に、国際学術誌「Trends in Ecology and Evolution」にオンライン掲載されました。
・イラスト/作成:中野伸一(生態学研究センター)
・撮影:アオコ写真(中野伸一)、集合写真(Xuexiu Chang/University of Windsor)
研究者のコメント
「私は、大学院生時代からアオコの研究に関わってきました。本格的なアオコ研究は、最初に就職した滋賀県琵琶湖研究所の研究員時代で、当時は琵琶湖でも毎年夏に多くのアオコが発生していました。その後、愛媛大学に異動してからも、松山市内の富栄養化したため池でアオコの研究を継続しました。日本では、アオコの研究は1970年代から続いているにもかかわらず、未だにわれわれは自然湖沼やダム湖のアオコ防除に成功していません。この意味で、アオコ研究は古くて新しいテーマです。」