京都大学メールマガジン Vol.57

京都大学メールマガジン Vol.57

-----------------------------------------------------
京都大学メールマガジン Vol.57
-----------------------------------------------------

------------------------------
目次:
◆総長メッセージ
◆巻頭言:渉外担当理事・副学長 大西 有三
◆白眉プロジェクト:Nathan Badenoch
◆大学の動き
◆研究成果
◆イベントのお知らせ
------------------------------


◆総長メッセージ: 京都大学総長 松本 紘

 さる3月11日に未曾有の東北地方太平洋沖地震が発生しました。この空前絶後ともいえる巨大地震と大津波で多くのかけがえのない命が失われましたことは疾痛惨憺の極みであります。とりわけ昨日の卒業式に参列されるはずであった本学の4回生の3名が含まれていることは極まりなく無念であります。ご遺族の方々には心からの哀悼の意を表します。この震災とそれに続く福島の原子力発電所事故により被害にあわれている方々および被災地にご家族、ご親戚、ご友人・知人がおられる方々に心からお見舞い申し上げます。

 今後、京都大学は熟慮断行を基本としながらも、眼前の事態から目をそむけず、また近きを釋(す)てず、すみやかに被災地からの新入生や学生への支援を進めていくとともに、被災地の方々にできる限りの協力を惜しまないつもりです。

 

◆巻頭言:渉外担当理事・副学長 大西 有三

 3月11日午後2時46分過ぎにM9.0の巨大地震として発生した東北地方太平洋沖地震は、未曾有の被害をもたらしました。被災に関しましては、大学に合格したばかりの学生、当該地出身の学生や教職員、様々な形で関係のある皆様方に、心よりお見舞い申し上げます。

 さて、平成20年10月1日付けで理事・副学長に就任後、はや2年6ヶ月が過ぎました。その間、施設・情報基盤・環境安全の担当に始まり、外部戦略・情報・安全管理担当を経て、昨年の10月から渉外担当になっています。渉外部は、新しい部署で、中身は外部戦略、社会連携などを包括的に所掌するものであり、平成23年4月以降の事務組織の新体制に整合性を持たせるべく、調整を進めています。

 通常の業務としては、品川インターシティにある東京オフィスの整備と活用、新装となった楽友会館の有効活用と日常管理、各種公開講座(春秋講義、市民講座、未来フォーラム、地域講演会の他、東京オフィスでの「京大の知」シリーズ講演会など)の企画・運営、自治体・関係機関をはじめ、対外的な窓口としての機能の発揮などがあります。

 こうした通常の業務以外に、特に戦略的に実行すべきことは、情報発信強化事業で、これは京都大学第二期重点実施計画に盛り込まれています。“京都大学らしさ”をアピールし、大学支援者との連携を強化するため、新しい視点による戦略的広告媒体を作成するという目標を立てています。日本および外国における京都大学のプレゼンスを高めるために、京都大学内のリソースである研究者や学生を積極的に活用するとともに、国際的な京都大学ブランドの構築へ繋ぐための情報発信を行う必要があります。

 この趣旨に従って、まず始めたのが、キャンパスマップ「Welcome! 京大」(A5版、カラー16ページ)の作成です。京都大学での大学生活にあこがれて吉田キャンパスを訪れる中・高校生に向けてキャンパス案内冊子を作成しました。この冊子は9名の現役学生が「初めて京大を訪れる人たちにもキャンパスの学生生活の魅力を感じてもらいたい」と思いを込めて企画・編集したもので、外部戦略室がサポートしました。各構内15分程度で回れる推奨ルート、学生の口コミによるお勧めスポットを掲載するなど、訪れたみなさんにキャンパスでの学生生活の雰囲気をイメージしてもらえる内容となっておりますので、是非お手にとってご覧ください。

 次の課題は、卒業生との連携です。現在実施している主な事業は、ホームカミングデイ(毎年11月の第2土曜日開催)、地域同窓会の立ち上げ支援(現時点で地域同窓会の数は15に上る)、地域同窓会との合同同窓会の開催や地域同窓会総会などへの役員派遣、ホームページ上の卒業生名簿システムである「京大アラムナイ」の運営と使い勝手の向上、役員と卒業生による企業トップの方々との懇談会の開催などであり、これに卒業生への生涯メールアドレスの付与の検討、京大アラムナイの登録者増の取り組み強化を新たな展開として考えており、京都大学らしい同窓会組織の充実に努めています。

 ところで、最近の我が国の状況を考えると、京都大学の重要課題としてはグローバル社会の中での教育・研究の国際化が挙げられます。国際的な大学ランキングでは、京都大学も含め日本の大学の位置が下がりつつあります。京都大学に留学生が多くいるといっても、全学生の5%程度、欧米の著名大学と比べると、微々たるものです。教育・研究で激しい国際競争が行われる中、京都大学関係者ではノーベル賞受賞者7名、数学のノーベル賞であるフィールズ賞2名を輩出していますが、最近の中国・韓国の大学の充実ぶりを見ると安閑としておられません。学生の内向き思考が顕著になり、外国へ留学する人数が激減していますので、きめ細かいケアーや外国にある京大同窓会の充実を図り、外国に出る学生達の安心感を高める必要があります。

 現在、私が担当している海外同窓会の充実策においては、昨年から今年にかけて世界に15カ所の同窓会支部を作り、卒業生間の連絡網を強化しています。外国で仕事をする場合とか、外国に留学する場合に現地の生きた情報が欲しいときがあると思いますが、その時には現地の京大同窓会に連絡してください。既に何人もの社会人や京大生が同窓生のお世話になっています。外国の京大同窓会には、京都大学に留学して母国に帰った人たちの会と日本から仕事等で現地に派遣され活躍されている人たちの会と2種類ありますが、どちらも連絡が可能です。京都大学ホームページの「京都大学同窓会」の中に「地域・その他同窓会」というページがあり、同窓会連絡先の所在地がGoogle Mapで示されていますので、各自連絡を取って連絡網を有効に使っていただければと思います。

 もう一つ忘れてはならないのが、「京大基金」の充実です。昨今の緊縮財政の中で、独自の資金を持って学生支援や施設充実を図ることが必須と言われています。欧米の大学では莫大な大学基金を有するところもありますが、日本では取り組みが始まったばかりです。寄付文化の違いや国立大学として生きてきた過去の姿からするとやむを得ない面もあります。京都大学の状況はお世辞にも十分とは言えない有様で、これから様々な取り組みを行って「京大基金」の充実に努めたいと考えています。基金募集などについて面白い有効なアイディアがありましたら、お知らせください。

 これからも渉外部の活動について、皆様方のご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

◆京都大学次世代研究者育成支援事業「白眉プロジェクト」特任准教授 Nathan Badenoch(東南アジア地域研究)

ことばと話者―多言語社会について考える

 「私たちみたいな小さい民族集団は、色々な言語を使うのがあたりまえだ」という発言を私の調査地であるラオス中国国境地帯でしばしば耳にする。少数民族の人なら、バイリンガルどころか、三つも四つも言葉を話すことは珍しくない。フィールドワークの現場であるルアンナムター県だけでも20以上の言語が話され、ラオスの豊富な文化多様性を物語る。

 現在全世界で話されている言語の数は7000を上回ると言われているが、2週間に一つというペースでその多様性が失われつつある。ラオスでもいくつかの言語が消滅の危機に直面している。

 私がラオス政府の研究機関で社会経済専門家として勤めていた昨年までの2年間、文化の多様性は経済開発を推進するうえでの障害だという意見をよく聞いた。様々な言語を話し、違った社会組織をもち、そして異なる宇宙観や価値観があるため、「開発」を推進しようとする人々は、予算や人材が限られている中央政府では手に負えない問題だと考えていた。

 しかし私の調査村から考えると、社会財産としての言語は重要な価値をもっている。アイデンティティを表現する言語、ネットワークを形成する言語など、様々な役割がある。特に、新しい生業を取り入れたり、ゴムのような新しい商品作物の買い手を獲得したり、地域に浸透する市場経済に乗り遅れないように様々な手を打つ少数民族の村では、国境を跨ぐ民族集団の社会ネットワークを活用する例が少なくない。また、彼らが国の行政や教育制度に取り込まれて行く中で、民族集団としてのまとまりを保つうえでも大きな役割を果たしている。

 「希少言語を救うためには、多言語社会が必要だ」とバークレー大学のマティソフ名誉教授が主張している。それは、世界の皆がそれぞれ10もの言語を話さなければならない、という意味ではない。東南アジア、アフリカ、中南米のような地域では、多言語使用が通常態である。しかし、主要民族の言語を「国語」として優先し、教育から少数民族の言語を排除したり、「国語」以外の言語の公的使用を制限したり、行政制度や国家政策が言語の多様性に大変な圧力をかける国も多い。

 言語学者や人類学者は、この問題を社会変容として理解する。一方で、一部の市民団体は人権問題とみなしている。しかし、私の立場からは、それぞれの言語の話者にとって深刻な問題である以上に、人間社会全体の多様な共有共用「知的財産」の危機としてみえる。私は現地調査で日常的にラオ語、中国語、ムン語、モン語、クム語とシラー語を使い、彼らの「言語実践」を明らかにしようとしている。言語実践にみられる現地社会の思考・戦略を学びながら、言語の多様性を支える将来の多言語社会のあり方を構想していきたい。


◆大学の動き◆

○医学研究科社会健康医学系専攻で東北地方太平洋沖地震による健康障害の予防・治療に関する学術情報リソース提供を開始しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110318_1.htm

○東北地方太平洋沖地震より本院DMATチームが帰院しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110315_1.htm

○平成23年東北地方太平洋沖地震に関する本学の対応状況等について
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110317_1.htm

○平成22年度「京都大学総長賞」表彰式を挙行しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110311_2.htm

○平成22年度「京都大学体育会スポーツ表彰」授与式を挙行しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110224_2.htm

○総合博物館が広州大学生命科学学院と部局間学術交流協定を締結しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110308_1.htm

○第3回京都大学優秀女性研究者賞(たちばな賞)表彰式を開催しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110303_3.htm

○「アメリカ科学振興協会(AAAS)年次総会」に出展しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110220_2.htm

○京都大学東京(関東)地区同窓会(仮称)の設立に向けての懇談会が開催されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110223_3.htm

○第8回京都大学東南アジアフォーラムおよび日本人同窓会主催パーティーをバンコクで開催しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110212_2.htm

○第3回湯川・朝永奨励賞授賞式を挙行しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110223_2.htm

○USJI WeekおよびワシントンDC京大会との懇談会を開催しました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110211_2.htm

○化学研究所に寄附研究部門「ナノ界面光機能(住友電工グループ社会貢献基金)研究部門」を新設
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110223_1.htm

○第3回京都大学優秀女性研究者賞(たちばな賞)の受賞者決定および表彰式について
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110222_1.htm

○最先端・次世代研究開発支援プログラムに本学から36件採択されました。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110210_2.htm


◆研究成果◆

○自動でバイタル情報を記録する体温計・血圧計システムの実証実験を開始
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110304_1.htm

○マウスおよびヒトiPS細胞の心筋細胞分化に及ぼすサイクロスポリンAの効果
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110228_2.htm

○1300世代暗黒に保たれたショウジョウバエの活動リズム
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110301_1.htm

○フラスコで簡単に合成できるナノチューブの作製に世界で初めて成功 -パーツの組み換えで性質のコントロールが可能な新材料の開発-
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110228_1.htm

○田沢湖で絶滅した固有種クニマス(サケ科)の山梨県西湖での発見
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110222_1.htm

○磁石を使ったメモリに道:磁壁の電流による移動の要因を解明
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110221_1.htm

○虫歯の病原因子である酵素の立体構造を世界で初めて解明 ~虫歯の予防物質を探索するための手がかりを得る~
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2010/110217_1.htm


◆イベントのお知らせ◆

○レクチャーシリーズno.89 ジュニアレクチャー「元素の同位体が語る、生き物の暮らしと環境」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/100409_1.htm

○京都大学春秋講義
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h8/d2/news4/2010/110525_1.htm

○京都人類学研究会4月季節例会
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110422_1.htm

○井戸端サイエンス工房 サイエンス・カフェ 第20回 ~科学をおやつにティータイム~「となりの元素 -モトモトヒトは元素人?!-」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110423_2.htm

○2011年度上賀茂試験地 春の自然観察会
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110423_1.htm

○2011年親子理科実験教室(特別企画 第1弾)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news4/2010/110424_1.htm


>>その他のイベント情報はこちらをご覧ください。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja?type=monthly&;c2=1


---------------------------------
★このメールは、転送していただいて差し支えございません。
---------------------------------
★このメールは送信専用メールアドレスから配信されています。
このままご返信いただいてもお答えできませんのでご了承ください。
---------------------------------
★配信停止
https://reg34.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=rbn-rdnd-f044992db74e71788c1e184d44f591d0
のフォームから配信停止をおこなってください。
---------------------------------
□編集・発行
京都大学 総務部広報課 ksens521*mail.adm.kyoto-u.ac.jp (*を@に変えてください)
〒606-8501
京都市左京区吉田本町 電話 075-753-2072
---------------------------------