急勾配水路で壊れる流れと生き残る流れ-等流と転波列の数理-

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公開日

研究者情報

研究者名

松徳 優佳

概要

 京都大学大学院農学研究科の宇波耕一准教授、松徳優佳同修士課程学生、ドイツ・ヨルダン大学のDia Zeidan教授の研究グループは、急斜面の水路においてある条件のもとでは、等流と呼ばれる滑らかで一様な流れは壊れ、転波列と呼ばれる不連続を含む流れが壊れずに生き残ることを数学的に明らかにしました。転波列は、ダムの洪水吐放水路などの設計に影響する重要な現象であり、日常でも雨天時に急坂のアスファルト路面に現れる身近な流れです。本研究では、現代の流体力学で広く用いられる「弱エントロピー解1」の理論を用いることにより、農業工学や土木工学では理解が不十分であったこれらの現象に、厳密な説明を与えました。この成果は、現行の公共事業における水理構造物の設計基準が、安定な定常流のみを前提としているという根本的な問題を示唆しています。今後は、転波列の特性を魚道などの生態系配慮型構造物に応用する研究を進める予定です。本研究成果は、2026年9月15日に国際学術誌「Physics of Fluids」にオンライン掲載されました。

画像
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蔵王ダム(日野川流域土地改良区)とヨルダン王国カラク県の道路で見られた転波列(宇波撮影)

研究者のコメント

「転波列の数学的必然性や景観的美しさと、土木工学分野での理解の浅さとのギャップが、本研究を進める強い動機となりました。基準にあるからというだけで、現実には発生しない現象を想定した設計がまかり通る状況に違和感を覚え、厳密な数理解析によって現象の本質を明らかにする必要があると感じました。転波列は決して特殊な現象ではなく、方程式が示す基本的なふるまいです。この理解が、水理構造物の安全性向上、生態系保全、そして景観創生につながることを期待しています。」(宇波耕一)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1063/5.0341050

【書誌情報】
Koichi Unami, Dia Zeidan, Yuka Matsutoku (2026). Ill-posedness of uniform flows and formation of roll waves in the one-dimensional shallow water equations. Physics of Fluids, 38, 9, 094116.