2010年代から我が国では医療機関の再編や統合が進められています。特に地域医療の中核となる公立病院については、地域のニーズに応じた再編が各地で検討されてきました。しかし、これまで病院の再編や統合について、その効果を地域住民の立場から分析した研究はほとんど報告されていませんでした。
今中雄一 医学研究科教授、國澤進 同准教授、岸本健治 同客員研究員らの研究グループは、国内で実際に行われた公立病院の再編事例について、再編後に住民の入院数や受診数がどのように変化するか、保険請求データを用いて分析しました。再編が行われた地域は過疎化と高齢化が進み、再編前は入院を必要とする住民の多くが他の地域に入院していました。65歳以上を対象として再編前後の7年間に入院した計58,929件を分析したところ、その地域内に入院した患者数は再編後に増加し、他の地域に入院した患者数を上回りました。この結果は、この再編によって地域住民へ医療を提供する体制が向上したことを示唆します。
本研究成果は、2026年4月2日に、国際学術誌「BMC Health Services Research」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「病院の再編や統合は、患者さんや医療者にとってはもちろんのこと、医療政策や社会全体にとって重要な関心事となっており、この研究テーマの知見の意義は大きいと感じています。実際に再編が行われた地域の実情や経緯、その影響を知るための情報やデータの収集、分析において、一般の医学研究とは異なり諸々の困難を乗り越える必要がありました。地域住民に基づいた分析を示した点、再編後の観察が比較的長期間である点 、医療圏内外における受療者数の推移を示した点が本研究の強みとして挙げられます。」(岸本健治)
【DOI】
https://doi.org/10.1186/s12913-026-14388-3
【書誌情報】
Kenji Kishimoto, Susumu Kunisawa, Yuichi Imanaka (2026). Impact of public hospital restructuring on the admission of elderly residents in Japan: a regional population-based study. BMC Health Services Research, 26, 686.