FLT3遺伝子変異は急性骨髄性白血病(AML)において最も高頻度に認められる遺伝子変異の一つであり、予後不良因子として知られています。FLT3阻害薬であるギルテリチニブ(商品名:ゾスパタ®、製造販売:アステラス製薬株式会社)は再発・難治性(R/R)FLT3変異陽性AMLに対する標準治療として広く使用されていますが、同種造血幹細胞移植(HSCT)後の維持療法としての忍容性や有効性については、臨床試験以外の実臨床での検証が十分ではありませんでした。
そこで、新井康之 医学部附属病院講師、大引真理恵 日本造血細胞移植データセンター(JDCHCT)医師、熱田由子 同センター長(兼:愛知医科大学教授)、矢野真吾 東京慈恵会医科大学教授らの研究グループは、日本造血・免疫細胞療法学会(JSTCT)およびJDCHCT、アステラス製薬株式会社との産学協同研究として、R/R FLT3変異陽性AML患者120例を対象に、ギルテリチニブの移植前後の使用実態と治療成績を調査しました。事後解析の結果、移植後ギルテリチニブ維持療法を受けた55例では、投与量の調整が半数以上で必要であったものの、3年無再発生存率(RFS)は58.8%と、維持療法を受けなかった群の36.4%と比較して有意に良好であることが明らかになりました。特に、臍帯血移植を受けた患者では、維持療法群の3年RFSが79.4%と、維持療法の効果がより顕著に認めれました。今回の解析の結果、ギルテリチニブ維持療法の有用性が示されました。
本研究成果は、2026年4月12日に、国際学術誌「Transplantation and Cellular Therapy」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「FLT3変異陽性の急性骨髄性白血病は、造血幹細胞移植後も再発リスクが高いことが課題でした。本研究により、ギルテリチニブによる移植後維持療法が実臨床においても再発を抑制し、生存を改善できることが示されました。特に臍帯血移植後の顕著な効果は注目に値します。用量調整が必要な場合が多いものの、適切な管理のもとで安全に使用できることも明らかになりました。本研究の知見が、一人でも多くの患者さんの治療に役立つことを願っています。」(新井康之)
【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.jtct.2026.03.042
【書誌情報】
Yasuyuki Arai, Marie Ohbiki, Mio Kurata, Shuichi Ota, Masatsugu Tanaka, Kazunori Imada, Takahiro Fukuda, Yuta Katayama, Noriko Doki, Yoshinobu Kanda, Mamiko Sakata-Yanagimoto, Koichi Onodera, Nobuhiro Hiramoto, Noboru Asada, Takashi Ishida, Hiroki Uchida, Satoshi Uno, Takanori Teshima, Akiyoshi Takami, Takaaki Konuma, Masamitsu Yanada, Yoshiko Atsuta, Shingo Yano (2026). Maintenance treatment with gilteritinib suppresses post-transplant relapse in relapse/refractory FLT3-mutated acute myeloid leukemia. Transplantation and Cellular Therapy.