SARS-CoV-2肺炎の重症化に好中球のRegnase-1タンパク質が寄与―好中球のRegnase-1を標的とした治療の可能性―

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 安田圭子 医学研究科特定助教(現:名古屋市立大学講師)、竹内理 同教授、松浦善治 大阪大学特任教授、渡辺登喜子 同教授らの研究グループは、免疫細胞の炎症を抑えるブレーキとして働くRegnase-1(レグネース1)が新型コロナウイルスSARS-CoV-2感染マウスモデルの系において重症化に寄与することを見出しました。

 ウイルス感染に対する自然免疫応答は、適切にウイルスを除去し、また過剰な活性化を引き起こさないように調節されています。しかし、免疫系が適切な応答をコントロールできず、いわゆるサイトカインストームを引き起こすことが、SARS-CoV-2感染重症化の一因であることが分かっています。Regnase-1は、免疫細胞および非免疫細胞において、炎症性サイトカインをコードするmRNAを分解することで炎症を抑制するタンパク質です。Regnase-1欠損マウスは異常なサイトカイン産生に伴う強い炎症を引き起こす一方、Regnase-1の細胞内での量が野生型と比べ半分程度に低下したRegnase-1ヘテロ欠損マウスは、定常状態では特に症状を示しません。しかし、本研究でこのマウスにマウス適応型SARS-CoV-2(MA10株)の感染実験を行ったところ、野生型マウスと比較して体重減少や致死率が低く、SARS-CoV-2感染による肺炎も軽症であったことから、Regnase-1がSARS-CoV-2感染に対する生体応答を負に制御していることが分かりました。また、好中球に発現するRegnase-1がSARS-CoV-2感染に対する防御応答制御に関わることや、好中球でRegnase-1が過剰なI型インターフェロン応答に関わり、感染の重症化に寄与することが示唆されました。したがって、好中球におけるRegnase-1の量を調節することは、重症ウイルス感染症に対する新たな治療標的となる可能性があります。

 本研究成果は、2026年2月9日に、国際学術誌「PLOS Pathogens」にオンライン掲載されました。

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好中球でRegnase-1が過剰なI型インターフェロン応答に関わりSARS-CoV-2肺炎が重症化する。

研究者のコメント

「この研究は京都大学の学内の共同研究者の先生方に加え、大阪大学、千葉大学の多くの共同研究者の先生方のご指導、ご協力があって進めることができました。予想に反する結果で、強いインパクトを受けた一方で、未解明なところが残っていますので、今後好中球でのRegnase-1の役割がよりクリアになれば、と考えています。」(安田圭子)

研究者情報
研究者名
安田 圭子
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1013969

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/299545

【書誌情報】
Keiko Yasuda, Junichi Aoki, Kotaro Tanaka, Shintaro Shichinohe, Chikako Ono, Alexis Vandenbon, Daiya Ohara, Yukiko Muramoto, Songling Li, Daisuke Motooka, Hitomi Watanabe, Keiji Hirota, Gen Kondoh, Takeshi Noda, Daron M. Standley, Yuzuru Ikehara, Seiji Okada, Tokiko Watanabe, Yoshiharu Matsuura, Osamu Takeuchi (2026). Regnase-1-mediated regulation of neutrophils modulates SARS-CoV-2 pneumonia. PLOS Pathogens, 22, 2, e1013969.