飲酒がもたらす充足感を担う仕組みを解明―希少糖アルロースでマウスの減酒を達成―

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 お酒の飲み過ぎは、個人の健康リスクだけでなく、社会に大きな負担をかけています。しかし、飲み過ぎの原因は未解明で、効果的な対策が不足しています。

 佐々木努 農学研究科教授、松居翔 同助教、疋田貴俊 大阪大学教授、Yulong Li 中国・北京大学(Peking University)教授らの研究グループは、飲酒後に充足感を生み出す仕組みが存在し、その働きの低下が飲み過ぎの一因となることを明らかにしました。飲酒すると、肝臓から線維芽細胞増殖因子21(FGF21)が分泌されます。そして脳のオキシトシン陽性神経細胞が活性化され、ドーパミン神経の活性化が続くことで充足感が生まれ、飲酒の間隔が延びることを解明しました。アルコール依存症のマウスモデルでは、この機能が低下していました。FGF21を誘導する食品成分(希少糖アルロース)を餌やお酒に混ぜて与えると、健常およびアルコール依存症のマウスにおいてこの仕組みが刺激されて減酒が達成できました。つまり、飲酒がもたらす充足感を担う仕組みが存在し、アルコール依存症ではその機能が低下し、その機能を活性化すると減酒が可能であることを、マウスにおいて示しました。今後、人における有効性と安全性を確かめる必要がありますが、「続けやすい減酒」対策の開発につながる可能性があります。

 本研究成果は、2026年1月12日に、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載されました。

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©️いずもり・よう

研究者のコメント

「『足るを知る(知足)』を司る体の仕組みを明らかにするために、飲食が充足感を生み出す仕組みの解明に、科学的に取り組んでいます。その成果を活用して、飲食に係る健康課題を解消することを目指しています。取り組み不足の未病の問題に対して、健康・未病・病気を連続的に捉えて研究し、食・医薬そしてその間をつなぐ対策の開発を目指しています。」(佐々木努)

「栄養やホルモン、さらには体内で生じる多様な代謝産物が、代謝や脳の働きを通じて飲食行動や社会性をどのように形づくるのか、その基礎的な仕組みの解明に取り組んでいます。体と脳をつなぐ情報の流れを丁寧に理解し、多様で複雑な行動の生物学的基盤をより深く捉えていきたいと考えています。」(松居翔)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1073/pnas.2525172122

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/298930

【書誌情報】
Sho Matsui, Yuma Takahashi, Shuhei Morioka, Takaaki Ozawa, Sachiho Kanayama, Hiroki Iwama, Lan Geng, Kazuhiro Umemoto, Yasuo Oguri, Satoshi Tsuzuki, Yulong Li, Takatoshi Hikida, Tsutomu Sasaki (2026). Negative feedback regulation of alcohol ingestion through the FGF21-PVH oxytocin-VTA dopamine system. Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), 123, 3, e2525172122.