ウイルスが抗ウイルスタンパク質をコード―20アミノ酸で構成されるVPgタンパク質―

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 ウイルスは宿主の細胞に感染してその機能を使って増殖して細胞死を引き起こす事があります。

 藤田尚志 医生物学研究所連携教授らの研究グループは、この時の細胞死の機構の解析を行いました。脳心筋炎ウイルス(EMCV)による細胞死の解析をしたところ、感染細胞から放出された因子によることが明らかになりました。この因子だけを正常な細胞に作用させると直接ウイルスが感染していないにも関わらず細胞を殺しました。この因子は免疫応答の結果、宿主細胞が産生するサイトカインの一つであるTNF-αとEMCVがコードする蛋白質VPgの混合物である事が判明しました。VPgはこれまでEMCVのRNA複製に必須のタンパク質として知られていましたが、今回新たな活性を有することを発見しました。VPgはアミノ酸20で構成される低分子です。さらにVPgはサイトカインであるインターフェロンγ(IFN-γ)の受容体(IFNGR1/2)に結合してIFN-γと同様な刺激を入れることによって、細胞死の誘導、抗ウイルス活性を示すことを発見しました。VPg単独で細胞死を誘導する活性がありますが、TNF-αとの協調で作用が増大していることがわかりました。また、EMCVと近縁の数種のウイルス(カルディオウイルス属)のVPgにも同様な活性がありました。ウイルス自体が抗ウイルス活性を持つタンパク質、しかも宿主の免疫応答に重要なIFN-γの働きを模倣するタンパク質をコードしていることは予期しない発見でした。カルディオウイルスのVPgはその進化の過程でこの活性を獲得したものと考えられます。カルディオウイルスの病原性(脳心筋炎の病態)、持続感染、感染個体間での伝搬効率などを規定しているものと考えています。IFN-γは腫瘍の治療などに用いられる生物製剤ですが、その分子量は3万であり大量生産と精製は容易ではなく、高コストになっています。VPgは分子量3000以下であり化学合成によって比較的安価に純品が得られます。このことから、感染症、腫瘍、免疫療法などへの応用が考えられます。

 本研究成果は、2025年12月16日に、国際学術誌「Cell Reports」にオンライン掲載されました。

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EMCVのVPgは細胞外に放出されIFNGR1/2に結合してIFN-γ様の活性を誘導する。(BioRenderで作製)

研究者のコメント

「ウイルスのRNA複製に必須なタンパク質VPgが、それまで知られていなかった、サイトカインとしての活性を持つという発見は、それまでの常識を覆すもので、論文投稿した際、事実であることの多くの証拠を求められました。証明には多くの時間がかかりましたが、ウイルス学、免疫学の新たな扉を開く事ができたと考えています。」

研究者情報
研究者名
Takashi Fujita
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2025.116740

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/299145

【書誌情報】
Yutaro Shirasaka, Fumihiko Takeuchi, Satoshi Koike, Hiroki Kato, Takashi Fujita (2026). A 20-amino-acid Cardiovirus protein exhibits cytokine-mimicry activity to regulate viral replication. Cell Reports, 45, 1, 116740.

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