成長期の栄養環境(栄養履歴)は、成人した後の疾患の発症リスクや寿命にまで、成長期を越えて影響しうることが報告されています。しかし、そのメカニズムには不明な点が多く残されています。
水谷祥子 生命科学研究科博士課程学生(兼:同日本学術振興会特別研究員(DC2))(研究当時)、服部佑佳子 同助教(現:白眉センター/生命科学研究科特定准教授)、上村匡 同教授(現:名誉教授)らの研究グループは、モデル生物キイロショウジョウバエの幼虫に、特定の脂肪酸と分岐鎖アミノ酸を過剰に摂取させると、成虫になった後に標準的な餌で飼育しても寿命が短縮することを発見しました。そして、この栄養履歴の下で成長した幼虫の体内では、ヒストンアセチル基転移酵素Gcn5の機能が低下していること、さらに、Gcn5の機能を幼虫期に低下させるだけで成虫の寿命が短縮することを見出しました。本研究では、世界に先駆けて動物の寿命に影響を与える栄養履歴を体系的に探索し、栄養履歴の標的分子の1つが幼若体内のGcn5である可能性を示しています。
本研究成果は、2025年7月10日に、国際学術誌「EMBO Reports」にオンライン掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s44319-025-00503-8
【書誌情報】
Shoko Mizutani, Kanji Furuya, Ayumi Mure, Yuuki Takahashi, Akihiro Mori, Nozomu Sakurai, Takuto Suito, Kohjiro Nagao, Masato Umeda, Kaori Watanabe, Yukako Hattori, Tadashi Uemura (2025). Growth phase diets diminish histone acetyltransferase Gcn5 function and shorten lifespan of Drosophila males. EMBO reports.