日本では米の不足や価格高騰が続いており、米の生産性を高めることは農産業における重要な課題の一つです。植物は成長の調節や生育環境への適応のために、植物ホルモンと呼ばれる様々な分子を作ります。その一つであるジベレリンは、葉や茎の伸長や種子の発芽を促進するといった働きを持ち、「緑の革命」と呼ばれる農業革命に利用されるなど、農業においても非常に重要なホルモンです。
石田俊晃 化学研究所博士課程学生(研究当時)、増口潔 同助教、山口信次郎 同教授、Zuhua He 中国科学院教授、Shubiao Zhang 中国・福建農林大学教授らの国際共同研究グループは、イネから発見した「EUI2」という酵素タンパク質がジベレリンの働きを低下させ、イネの先端の節の間(最上位節間)の長さを巧妙に調節していることを明らかにしました。イネは最上位節間が十分に伸長することで穂を出し、種子を作ることができます。また、EUI2が存在しない変異体 (eui2変異体) は、「ハイブリッド米」と呼ばれる優れた性質を持つ雑種米を開発するために利用されています。今回の発見は、ジベレリンの働きを低下させる新たなメカニズムの発見に加えて、私たちの重要な主食であるイネの収量増加への貢献が大いに期待される知見です。
本研究成果は、2025年6月4日に、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」に掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1073/pnas.2415835122
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/294533
【書誌情報】
Toshiaki Ishida, Yingying Zhang, Hongbo Zhu, Shoko Fudano, Yu Peng, Yoshiya Seto, Kiyoshi Mashiguchi, Jiyun Liu, Zuhua He, Shubiao Zhang, Shinjiro Yamaguchi (2025). Stepwise deactivation of gibberellins during rice internode elongation. Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), 122, 23, e2415835122.