小児の稀ながん「肝未分化胎児性肉腫」の段階的悪性化メカニズムを解明―良性腫瘍から悪性化する遺伝子変化を発見―

ターゲット
公開日

研究者情報

研究者名

Yoshinori Uchihara

概要

 京都大学大学院医学研究科 発達小児科学 滝田順子教授、内原嘉仁同助教、福井大学学術研究院 小児科学分野 梅田雄嗣教授、静岡県立こども病院 血液腫瘍科の田坂佳資医長らが中心となり、認定特定非営利活動法人日本小児がん研究グループ(JCCG)肝腫瘍委員会のサポートを受けて小児の稀な肝臓の腫瘍である「肝未分化胎児性肉腫」が良性腫瘍「肝間葉性過誤腫」から段階的に悪性(がん)化していく詳しいしくみを明らかにしました。全ゲノムシークエンス解析により、両者は共通して19番染色体上のC19MC領域の構造異常を有しており、新たな遺伝子異常の獲得が肝未分化胎児性肉腫への悪性化につながることを突き止めました。さらに、患者さんへの体の負担が少ないリキッドバイオプシーの技術を用いることで、これまで診断が困難であったこれら稀な肝臓の腫瘍の診断精度を高め、治療効果判定に利用できることがわかりました。これらの成果は早期診断の一助になりかつ新しい治療薬の開発につながることが期待されます。

 本研究成果は、2026年7月14日にイギリスの国際学術誌「npj Precision Oncology」にオンライン掲載されました。 

画像
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UESL/MHLでは、C19MC miRNAクラスターの構造異常により、C19MC miRNAの発現が著しく増加します。

研究者のコメント

「本研究の最大の成果は、良性腫瘍に『TP53遺伝子の異常』という一つの遺伝子変化が加わることが、段階的な悪性化の決定的な引き金になっていると科学的に証明できた点にあります。この発見は、診断が極めて困難だった小児肝がんの謎を解き明かすだけでなく、新しい治療薬の開発への大きな一歩となります。さらに最先端技術であるリキッドバイオプシーの導入により、これまで不可能だった『血液による安全ながんのモニタリング』の可能性を切り拓くことができました。

希少がんの研究は、貴重な検体を提供してくださった患者さんとご家族、そして全国の共同研究者の支えがあって初めて成り立ちます。今回の成果を『過去の発見』にとどめず、これからの未来の患者さんを救うための実用的な医療技術へと育てるため、前方視的な検証を力強く進めてまいります。」(内原嘉仁)