連続光触媒反応による分子連結手法を開発―古典的合成試薬の新たな利用法を開拓―

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 松本晃 薬学研究科特任助教、前田夏実 同技術補佐員、丸岡啓二 同特任教授の研究グループは、リンイリドと二種類のアルケンを炭素-炭素結合形成反応によって逐次的に連結し、医薬品などの合成に有用な1,4-ジカルボニル化合物を迅速に供給する新しい手法を開発しました。

 同一分子内に複数の反応点を有する化合物は、別々の分子と炭素-炭素結合を形成することでこれらを繋ぎとめる役割を果たします。このような「分子連結素子」は、単純な構造をもつ原料から複雑な骨格を迅速に構築する上で有用であり、これまで生物活性化合物の合成などに広く利用されてきました。一方で、これらの分子連結反応の多くは有機金属化学種を用いる必要があり、その高い反応性や試薬の不安定性に起因する問題点がありました。本研究では、穏和な条件での分子活性化を可能にする光レドックス触媒を用いることで、古くから利用されてきた合成試薬であるリンイリドが画期的な分子連結素子として機能することを新たに見いだしました。これにより、医薬品をはじめとする有用分子の迅速供給が見込まれるとともに、本研究で明らかにしたリンイリドの反応性に基づく新たな有機合成反応の開発が期待されます。

 本研究成果は、2023年7月25日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

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本研究のイメージ図:連続光触媒反応によるリンイリドと二種類のアルケンの分子連結
研究者のコメント

「ノーベル賞の対象になった有用反応であるウィッティヒ反応の陰に隠れ、70年もの間日の目を浴びなかったリンイリドの反応性に文字通り『光を当てる』ことで、ラジカル反応分野における新たな利用法を切り拓くことができました。今後は本研究で開発した反応の有用性を実証していくとともに、明らかになったリンイリドの性質を最大限活用する革新的触媒反応の開発を目指して研究を展開していきます。」(松本晃)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1021/jacs.3c05337

【書誌情報】
Akira Matsumoto, Natsumi Maeda, Keiji Maruoka (2023). Bidirectional Elongation Strategy Using Ambiphilic Radical Linchpin for Modular Access to 1,4-Dicarbonyls via Sequential Photocatalysis. Journal of the American Chemical Society.