低周波信号の新規高感度量子センシング手法を開発―NV量子センサを用いた核磁気共鳴(NMR)世界最小線幅を実証―

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 水落憲和 化学研究所教授、E. D. Herbschleb 同特定助教、大木出 同研究員、芳井義治 スミダ電機株式会社Vice President、加藤宙光 産業技術総合研究所上級主任研究員、牧野俊晴 同研究チーム長らの研究グループは、低周波数の交流磁場を高感度に、且つ高周波数分解で計測できる新たな量子センシング手法を考案しました。

 ダイヤモンド中のNV中心を用いた量子センサ(NV量子センサ)は、室温で動作し、高感度、高空間分解能を有することから注目されています。幅広い分野での応用が期待されていますが、核磁気共鳴(NMR)計測への応用の期待から、これまでNMR線幅の先鋭化を実現する量子ヘテロダイン(Qdyne)法などが開発され、その実証研究が注目されていました。しかし、Qdyne法での交流磁場計測では、数十kHz程度の周波数で最大感度を有し、周波数が変わると著しく感度が落ちるという性質がありました。今回、新たな量子センシング手法を開発し、周波数にほぼ依存せず、高感度を維持することを実証しました。また、この手法をNV量子センサに適用して、水分子の水素を低周波数(数Hz)で計測し、これまでNV量子センサを用いて計測したNMR信号の線幅としては世界最小線幅(1.6 Hz)を実証しました。今回開発した手法はNMR以外にも、低周波領域など幅広い周波数領域での応用研究で用いられることが期待されます。

 本研究成果は、2022年9月22日に、国際学術誌「Physical Review Applied」にオンライン掲載され、更に、Editors' Suggestionに選ばれました。

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量子ヘテロダイン法を用いたNV量子センサ内臓装置のイメージ
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevApplied.18.034058

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/276539

【書誌情報】
E.D. Herbschleb, I. Ohki, K. Morita, Y. Yoshii, H. Kato, T. Makino, S. Yamasaki, N. Mizuochi (2022). Low-Frequency Quantum Sensing. Physical Review Applied, 18(3):034058.

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