優れたB型肝炎予防ワクチン開発に成功―既存ワクチンの弱点克服へ―

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 明里宏文 ヒト行動進化研究センター教授、鷲崎彩夏 同特定研究員、加藤孝宣 国立感染症研究所室長、村山麻子 同研究所研究員、郷保正 株式会社ビークル代表取締役らの共同研究グループは、B型肝炎の予防に繋がる優れた新規B型肝炎ワクチンの開発に成功しました。

 B型肝炎はB型肝炎ウイルス(Hepatitis B Virus; HBV)感染によって起こる肝臓の病気です。B型肝炎(HB)ワクチンはB型肝炎の予防に有効なことから、日本を含む世界の多くの国々でHBワクチンの予防接種が実施されています。しかし近年の研究では、このワクチンをすり抜けてしまうHBVがあることが報告されています。この理由として、ウイルスゲノムに特定の変異が生じたHBVは、ワクチン接種により作られる免疫を逃れてしまうことが判ってきました。このような変異を持つHBVは、ワクチン接種済みの人々にも拡がることが危惧されています。私達は、こうした変異HBVにも有効な免疫を作り出すことが可能な、新規ワクチンの開発に成功しました。このワクチンが実用化されれば、既存ワクチンの弱点を克服することでB型肝炎の予防に繋がることが期待されます。

 本研究成果は、2022年9月5日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。なお、同誌のMicrobiology and Infectious Diseases 部門のFeatured Articlesにも選ばれました。https://www.nature.com/collections/jedgcgeija

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図:B型肝炎の予防に繋がる優れた新規B型肝炎ワクチンの開発に成功しました。

「HBV母子感染の予防のため、子供へのB型肝炎ワクチン接種が世界中で進んでいます。しかし、子供がワクチンを接種していたにも関わらず、ワクチンエスケープ変異HBV株に感染している母親から子供への感染が生じてしまう、という残念な事実が多くの国々で報告されています。今回私達が開発した新たなB型肝炎ワクチンが、このような子供へのすり抜け感染予防に役立ってくれることを願ってやみません。」(明里宏文)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41467-022-32910-z

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/276204

【書誌情報】
Ayaka Washizaki, Asako Murayama, Megumi Murata, Tomoko Kiyohara, Keigo Yato, Norie Yamada, Hussein Hassan Aly, Tomohisa Tanaka, Kohji Moriishi, Hironori Nishitsuji, Kunitada Shimotohno, Yasumasa Goh, Ken J. Ishii, Hiroshi Yotsuyanagi, Masamichi Muramatsu, Koji Ishii, Yoshimasa Takahashi, Ryosuke Suzuki, Hirofumi Akari, Takanobu Kato (2022). Neutralization of hepatitis B virus with vaccine-escape mutations by hepatitis B vaccine with large-HBs antigen. Nature Communications, 13:5207.