分子間相互作用を可視化して評価する手法を開発 -さまざまな有機エレクトロニクスデバイスの性能の向上に期待-

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公開日

梅山有和 工学研究科准教授、今堀博 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)教授らの研究グループは、カーボンナノチューブ の上に有機分子の二分子会合体を形成させることで、その二分子会合体に対して、原子レベルの超高解像度を有する電子顕微鏡を用いた構造観察や光物性などの特性評価を可能にする手法を開発しました。

本研究成果は、英国時間2015年7月15日に英オンライン科学誌「Nature Communications」誌で公開されました。

研究者からのコメント

左から今堀教授、梅山准教授

今後は、天然の光合成で重要な役割を果たすクロロフィルの類縁体や、パイ共役系高分子などにも展開します。また有機分子とSWNTを繋ぐリンカーの構造を変えて相互作用の仕方を変化させつつ、それらの諸物性を明らかにして行く予定です。

概要

一般に個々の有機分子の特性は、その分子が有する化学構造により決定されますが、薄膜中など分子が会合した状態での性質は、隣り合う分子同士がどの ように相互作用しているかによっても大きく影響されます。しかしながら、有機分子の会合体の構造を簡便に知るための手法はこれまでありませんでした。

本研究では、分子会合体の最小単位である二分子会合体の分子間相互作用を明らかにするために、原子レベルでその会合構造を決定し、有機分子の会合構造を初 めて可視化しました。通常、有機トランジスタや有機発光ダイオード、有機太陽電池などの有機デバイスにおいては、有機半導体性分子材料が薄膜状態で用いら れていますが、本研究で開発された手法を活用することで、分子会合構造の新たな設計指針が得られ、デバイス性能の向上が実現できると期待されます。


本研究の概念図

詳しい研究内容について

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/ncomms8732

[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/198785

Tomokazu Umeyama, Jinseok Baek, Yuta Sato, Kazu Suenaga, Fawzi
Abou-Chahine, Nikolai V. Tkachenko, Helge Lemmetyinen & Hiroshi Imahori
"Molecular interactions on single-walled carbon nanotubes revealed by
high-resolution transmission microscopy"
Nature Communications 6, Article number: 7732 Published 15 July 201

  • 日刊工業新聞(7月16日 29面)に掲載されました。

※ 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)は、文部科学省「世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラム」に平成19年度に採択さ れた拠点です。WPIプログラムは、第一線の研究者が是非そこで研究したいと世界から多数集まってくるような、優れた研究環境ときわめて高い研究水準を誇る「目に見える研究拠点」の形成を目指しています。