準平面型の骨格を用いた革新的有機半導体材料開発に成功 -太陽電池の高効率化に期待-

ターゲット
公開日

2014年4月26日

若宮淳志 化学研究所准教授、村田靖次郎 同教授、梶弘典 同教授、福島達也 同助教、西村秀隆 同大学院生らは、独自に設計した準平面型の骨格を用いて、電荷輸送特性に顕著な異方性を示す、革新的な有機半導体材料の開発に成功しました。

本研究成果は、ドイツ科学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版に2014年4月26日(日本時間)に掲載されました。

研究者からのコメント

若宮准教授

有機エレクトロニクスでは、デバイスの構造に応じて必要とされる電荷輸送の方向が異なりますが、本研究で開発した有機半導体材料の特徴は、基板に対して垂直方向に高い電荷輸送特性を必要とする有機太陽電池および有機EL素子の材料として有用であると注目されます。

今後は、準平面構造を用いるという分子設計概念に基づいて、有機半導体材料を進めることにより、有機太陽電池、有機無機ハイブリッド型太陽電池の高効率化(光電変換効率の向上)や、有機EL素子の高性能化につながるものとして大いに期待されます。

太陽電池への応用に関しては、すでに当研究室では11%を越える性能をもつ塗布型の太陽電池の作製技術をもっています。本研究で示した分子設計概念に基づいた有機半導体材料を進め、太陽電池の材料に用いることで、さらに高い光電変換効率が実現できると考えています。

概要

有機エレクトロニクス分野における共通の課題の一つに、電荷を流しやすい優れた有機半導体材料の開発が挙げられます。限られた大きさをもつ有機分子を用いて高い電荷輸送特性を実現するためには、固体状態で分子の並び方(配列・配列)を制御することが重要となります。従来の有機半導体材料では、結晶性の材料には「強固な平面型」の骨格のもの、非晶質の材料には「ねじれたプロペラ型」のものが一般的に用いられてきました。これまで、結晶中での分子の配向と電荷輸送特性の相間関係に関する研究は進んできていますが、太陽電池や有機EL素子で用いられる非晶質膜中で、分子がどのように並び、電荷輸送特性にどのように影響を及ぼしているのかは依然不明確であり、分子の設計が立てにくいという状況にありました。

そこで、本研究グループは、固体中での分子の配向・配列の制御を指向した独自の骨格として「準平面型」の構造をもつ有機半導体材料を設計・開発しました。これらの分子は準平面型構造に起因して、結晶中で分子が1次元方向に完全に重なった形で分子が並ぶことがわかりました(図)。この分子の配向・配列を反映して、結晶では電荷の移動度に大きな異方性が観測されました。さらに、この分子は結晶中だけでなく非晶質膜中でも、電荷移動特性に大きな異方性を示すことを見出しました(図)。測定の結果、準平面型構造をもつ分子は非晶質でも基板に垂直方向に分子が重なった配列構造をある程度保っていることが明らかとなり、これにより高い電荷移動特性を示すことが分かりました。

この発見により、これまで不明確であった非晶質有機半導体材料開発の分子設計に新しい指針を与え、高い電荷輸送特性をもつ有機半導体材料開発に道を拓くものと注目されます。また、準平面構造を用いた有機半導体材料開発を進めることにより、基板に垂直方向に高い電荷輸送特性が必要とされる有機EL素子や有機太陽電池の飛躍的な高効率化の実現につながることが期待されます。

図:本研究成果

準平面構造により、一次元方向に密に分子が重なる。非晶質膜(アモルファス膜)でも電荷輸送特性に異方性(基板に垂直方向により高い電荷輸送特性)が観測された。本特徴をもつ有機半導体材料は有機太陽電池および有機EL素子の高効率化に有用

詳しい研究内容について

準平面型の骨格を用いた革新的有機半導体材料開発に成功 -太陽電池の高効率化に期待-

掲載情報

  • 日刊工業新聞(5月1日 15面)に掲載されました。