ルリクワガタの「ハニートラップ」を広葉樹林業の環境評価に応用

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研究者情報

概要

 時任美乃理 農学研究科助教らの研究グループは、ルリクワガタ類の定量調査法として開発された“ハニートラップ”(雌誘引型衝突板トラップ、Female-attracted Flight Interception Trap: F-FIT)を広葉樹林業地で検証し、捕獲数を森林の生息環境の指標として活用できることを示しました。

 木材利用と生物多様性の保全の両立には、生物の反応を定量的に捉える評価手法が必要です。幼虫が広葉樹の朽木で育ち、成虫が樹上の新芽を利用するルリクワガタ類は、広葉樹林の環境指標として期待されますが、従来の調査法では、調査者の技量への依存や繁殖場所の破壊が課題でした。研究グループが2021年に提案したトラップF-FITは、メスでオスを誘い、一定時間の捕獲数を比較できます。これを岐阜県飛騨市の広葉樹林業地に複数設置し、捕獲数を位置情報と結びつけて分析した結果、森林内部ほど捕獲数が多くなる傾向や、立木密度との関係が場所によって異なる可能性が示されました。結果を踏まえ、個々の林分の伐採・管理方法だけでなく、木材を運び出す設備や丸太の集積場、搬出路などに伴って一時的に生じる開空間や、周囲に残す森林との位置関係を考える重要性が指摘されました。今後は、調査規模を広げたさらなる検証と、森林管理への実装が期待されます。本研究成果は、2026年9月6日に、国際学術誌「Forest Ecology and Management」にオンライン掲載されました。

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撮影・作図:時任美乃理、淺野悟史

研究者のコメント

「ルリクワガタ類の成虫の活動最盛期であるブナ・ミズナラの展葉期を逃さないよう、雪解けを見計らって標高約1,200mの森に通い詰めました。未交尾のメスの管理も含め、1日の調査の裏には長い準備がありました。こうした積み重ねが実を結び、定量調査法F-FITを林業地の生息環境評価につなげられたことを嬉しく思います。共に議論を重ねた共著者、調査にご協力いただいた皆様、ご支援いただいた飛騨市の皆様に心より感謝します。」(時任美乃理)

「本手法を現場で役立つ『環境ものさし』(淺野、昭和堂、2022)へと育てていくには、科学的な検証を重ねるだけでなく、調査方法や成果が林業従事者や行政など地域の関係者にも広く共有され、実際の施業の見直しに生かされることが重要です。研究成果を現場の判断や行動につなげることは容易ではありませんが、引き続き飛騨市のみなさまのご協力をいただきながら、現場との対話と研究を重ね、森林資源の利用と生物多様性の保全の両立に役立つ成果を積み上げていきたいと考えています。」(淺野悟史)