研究者情報
概要
京都大学の山下洋名誉教授(現:フィールド科学教育研究センター特任教授)、フィールド科学教育研究センターの三田村啓理教授らの研究グループは、東京大学、福島大学、東北大学、近畿大学、水産研究・教育機構などと共同で、日本各地のスズキ1,847個体を調べ、206個体の耳石Sr:Ca比から生涯の塩分環境履歴を復元しました。未成魚期には雌雄とも約半数が河川を利用しましたが、成熟する2歳から3歳頃を境に、オスの大半は海洋生活へ移行し、河川を利用する成魚の9割以上はメスとなりました。ただし、5歳時点で河川を利用していたのは全体の約24%でした。河川を利用するメスも冬の産卵期には海へ下り、春以降に再び川へ戻ります。かつて河川には餌となる小型魚類が豊富で、多くの卵を生産するため大型化する必要のあるメスにとって、河川回遊には大きな利益があったと考えられます。しかし近年、河川の生物生産力は大きく低下しており、現在進行する河川環境の劣化が本種の河川回遊生態に影響を及ぼしている可能性があります。今後、その実態と仕組みを明らかにする必要があります。本研究成果は、2026年10月2日に国際学術誌「Journal of Fish Biology」に掲載されました。
研究者のコメント
「今回の研究で興味深いのは、若い頃には雌雄とも同じように河川を利用するのに、成熟後は性別により暮らし方が分かれることです。海産魚が川を遡るには移動や浸透圧調節の負担があります。それでも毎年川を遡って餌を食べ、海へ戻って産卵するスズキのメスは実に働き者です。働き者のメスの存在が、スズキの繁栄につながっているのではないかと考えています。海の水産資源を考える場合でも、海と川を一体の生態系として見ることが重要だと思います。」(山下洋)
【DOI】
https://doi.org/10.1111/jfb.70664
【書誌情報】
Yoh Yamashita, Kazuha Takai, Mari Kuroki, Kotaro Shirai, Yuki Terashima, Manabu Kume, Hiroyuki Togashi, Yutaka Kurita, Toshihiro Wada, Hiroaki Murakami, Shun Watanabe, Junichi Takagi, Edouard Lavergne, Hiromichi Mitamura (2026). Sex-dependent divergence in river use following maturation in Japanese seabass Lateolabrax japonicus revealed by otolith Sr:Ca chronologies. Journal of Fish Biology.