ぼっち育ちのオタマジャクシは仲間への関心が低くなる―社会性は血縁よりも経験が育てていた―

ターゲット
公開日

研究者情報

研究者名

長谷 和子

概要

 京都大学大学院地球環境学堂の長谷和子研究員は、アズマヒキガエル(Bufo formosus)のオタマジャクシを用いて、幼少期の社会経験と水環境が社会性に与える影響を調べました。多くの動物では血縁個体を識別する能力が知られていますが、幼少期の社会経験が仲間との関わり方にどのような影響を与えるかは十分に分かっていませんでした。本研究では、オタマジャクシを群れで育てる条件と単独で育てる条件、さらに水環境の異なる条件を組み合わせて行動実験を行いました。その結果、兄弟を優先して選ぶ行動は確認されませんでしたが、単独で育った個体は兄弟・他人を問わず他個体への接近が減り、中立的な場所に長くとどまることが分かりました。一方、水環境の違いによる影響は認められませんでした。これらの結果は、ヒキガエル幼生の社会性は血縁よりも幼少期の社会経験によって形成されることを示しています。本研究は、動物の社会性がどのように発達するのかを理解する手がかりとなるだけでなく、生物の行動発達や保全生態学への応用にもつながることが期待されます。本研究成果は、2026年8月6日に国際学術誌「Animal Cognition」に掲載されました。

画像
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兄弟同士で育てた「集団飼育」と単独で育てた「単独飼育」のグループを用意し、同種他個体に対する社会的選好性の選択テストを行った。水槽の量は死にポリエチレンネットで区画を作り、兄弟個体と非兄弟個体それぞれ10個体を刺激個体として配置した。選択テストでは、水槽の中央に試験個体を配置し、60分間動きを追跡。「兄弟側」と「非兄弟側」、さらに中央に「中立ゾーン」の区画を設け、それぞれ滞在時間を比較した。解析の結果、「単独飼育」グループの個体で「中立ゾーン」により長く滞在する傾向を示した。(作成・撮影:長谷和子)

研究者のコメント

「社会性は人間だけのものではなく、野生動物たちの世界にもいろいろな社会性を観察することができます。オタマジャクシの黒い群れを見たことのある方もたくさんいらっしゃると思います。あの小さなオタマジャクシも、いろいろな情報を元に仲間を認識しています。私たちは『生まれつきの能力』に注目しがちですが、この研究では、オタマジャクシでも幼少期の経験がその後の仲間との関わり方を左右することが分かりました。小さなオタマジャクシの研究ですが、『社会性は経験によって育まれる』という仕組みを理解する手がかりになれば嬉しいです。今回の研究結果が、オタマジャクシからのメッセージとして、人間を含めた動物の社会性について考えるきっかけになれば嬉しいです。」(長谷和子)