研究者情報
概要
運動や掃除など、「やったほうがいいとは分かっているけれど面倒なこと」を続ける方法として、その行動を習慣にすること(習慣化)が注目されています。習慣化には「同じ行動を何度も繰り返すこと」が大切ですが、意外にも、「繰り返した行動がそのまま同じ形で習慣になる」のかどうかは分かっていませんでした。
京都大学大学院医学研究科 淺岡 希美 助教、Adachi Pagano Diane 博士課程学生、林 康紀 教授の研究グループは、マウスに対して私たちヒトのような習慣行動を引き起こすことに成功し、そのとき何が起きているかを調べました。その結果、「行動が習慣になるかどうか(図中①)」と、「習慣になったあとどれくらい行動するか(頻度や量;図中②)」は、脳内の別々の神経回路によって決定されていることが分かりました。実際、「頻度や量」を決める神経回路の働きが弱いマウスは、行動を習慣化することはできても、習慣化した行動の頻度や量に関しては元の行動より少なくなってしまいました。
この結果は、「行動を繰り返せば、その行動はそのまま習慣となる」といったこれまでの考え方よりも、複雑なメカニズムで習慣が作られていることを示しています。この発見は、「頻度や量」を決める神経回路を選んで働きを変化させることで、強迫症などでみられる病的な習慣行動がどのように生まれるかを理解し、その制御法の開発につながる可能性があります。本研究成果は、2026年7月27日午前10時(ロンドン時間)に国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「習慣には自分の行動なのに自分でうまくコントロールできない不思議さがあります。今回の研究は、その不思議さに向き合い、『習慣って何だろう』と常に考えながら手探りで進めてきました。今後は、今回の成果をもとに、通常の習慣と病的な習慣の違いなどへと研究内容を発展させ、社会に還元できる発見ができるように努力していきます。」(浅岡希美)