小笠原諸島で樹上性外来トカゲの痕跡を探る―葉面環境DNAのふき取りで高感度に侵入検知―

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 外来生物の早期発見や侵入モニタリングは、定着を防ぎ、生態系への影響を軽減するために重要です。しかし、特に樹上性の爬虫類などは捕獲や目視による生息確認が困難であり、簡便かつ効率的な検知手法の開発が喫緊の課題とされていました。小笠原諸島などで深刻な生態系被害をもたらしている特定外来生物のグリーンアノールは樹上性の小型トカゲ類であり、まさにこうした確認が困難な種の典型例と言えます。

 辻冴月 情報学研究科助教、村上勇樹 自然環境研究センター主任研究員、戸田光彦 同研究主幹、八神遥介 同研究員、芦澤航 同上席研究員、西脇拓朗 同研究員、環境省の山本捺由他氏らの研究グループは、葉の表面に残されたグリーンアノール由来のDNA(環境DNA)をふき取ることで、本種の存在を高感度に検知する手法を開発しました。特に従来の粘着トラップではほとんど捕獲実績のない超低密度生息地からも、低濃度ながら本種由来の環境DNAを検出することに成功し、グリーンアノールの分布拡大を早期に検知する手段としての有用性が示唆されました。また、葉上にはそこを生息場所とするほかの生き物の環境DNAも残されているため、今後、本手法は樹上で生活する幅広い分類群の検出にも応用が期待されます。

 本研究成果は、2026年3月21日に、国際学術誌「Biological Invasions」にオンライン掲載されました。

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研究成果の概要。特定外来生物であるグリーンアノールの生息を、葉上に残された環境DNAを分析することで検知する手法の開発に成功した。(©辻冴月)

研究者のコメント

「環境DNAを用いた樹上性トカゲ類の検出には前例がほとんどなく、研究を始めた当初は、本当に葉の表面から検出できるのか半信半疑でした。サンプリング方法には試行錯誤を重ねましたが、現場のみなさんの協力のおかげで、予想以上に高感度でグリーンアノールを検出できたことに大きな驚きがありました。今後は、この手法をさらに簡便で高感度なものへと発展させ、外来種の早期発見だけでなく、希少種の生態調査などにも役立てていきたいと考えています。」

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1007/s10530-026-03797-4

【書誌情報】
Satsuki Tsuji, Yuki Murakami, Mitsuhiko Toda, Yosuke Yagami, Kou Ashizawa, Takuro Nishiwaki, Nayuta Yamamoto (2026). Developing terrestrial environmental DNA sampling methods for detecting arboreal invasive reptiles: a case study of the green anole in the Ogasawara Island, Japan. Biological Invasions, 28, 4, 80.

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