近年の免疫疾患の発症率上昇は、食生活の変化など生活様式の多様化による代謝状態の撹乱(代謝ストレス)が長期間にわたり影響を与えていることが一因と考えられています。しかしながら、代謝ストレスが、いつ、どこで、どのように免疫系に異常を及ぼすのか、その実体は分かっていませんでした。
但馬正樹 医学研究科講師とシドニア・ファガラサン 同特定教授(兼:理化学研究所チームディレクター)らの研究グループは、高脂肪食を給餌したマウスにおいてがんを攻撃するCD8+ T細胞が脆弱化しており、通常食に戻した後も長期間にわたり脆弱性が持続することを見出しました。この脆弱化の原因は、高脂肪食によりCD8+ T細胞内で多価不飽和脂肪酸(PUFA)が集積し、それが通常食に戻した後も維持され、PUFAの過酸化に起因する細胞死(フェロプトーシス)に高い感受性を示すことによるものでした。さらに、CD8+ T細胞はフェロプトーシスに対抗するため、プリン代謝物であるキサンチンを取り込み、抗酸化作用を持つBH4を産生していることも明らかにしました。
本研究により、過去の代謝ストレスがCD8+ T細胞の持続的な機能低下を引き起こすメカニズムが解明され、この知見はプリン代謝をターゲットとした新たながん治療戦略の開発に繋がることが期待されます。
本研究成果は、2026年4月13日に、国際学術誌「Nature Immunology」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「我々が日々の生活で絶えず晒されているストレスが、将来どのように免疫系の『質』に影響しうるかという疑問を出発点に本研究を進めてきました。研究を進める中で、我々の体がいかに精巧な仕組みの上で形づくられているかを知ることはとても興味深く、今回の発見が医療に貢献するものへと繋がるとすれば望外の喜びです。」(但馬正樹)
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41590-026-02491-w
【書誌情報】
Masaki Tajima, He Hao, Baihao Zhang, Yuta Matsuoka, Kazuhiro Sonomura, Koshi Imami, Yosuke Isobe, Rae Maeda, Yu-Hsien Lin, Akihiro Shimba, Ryoma Kato, Pedro Henrique Costa Cruz, Sayaka Washizu, Yosuke Ikejiri, Akiyo Morinibu, Clive Steven Barker, Jun Seita, Yibo Wu, Satomi Ito, Seiko Narushima, Rei Nakano, Mikako Maruya, Wakana Kobayashi, Sai Shanmukha Priya Narayanan, Jumana Shaheen, Hiroyuki Neyama, Ken-ichi Yamada, Makoto Arita, Yuki Sugiura, Sidonia Fagarasan (2026). Purine salvage pathway protects CD8⁺ T cells from metabolic stress. Nature Immunology.