パーキンソン病の症状を抑える「脳の底力」―運動習慣と適切な薬物療法が「脳の底力(運動予備能)」を高める―

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 パーキンソン病は脳内のドパミン神経が減少することで生じる病気ですが、ドパミン神経の減り方が同じであっても、運動症状の重さには大きな個人差があります。これは、脳が持つネットワーク機能を駆使してダメージを補う力が働くためと考えられており、この能力は「運動予備能(Motor Reserve)」と呼ばれます。いわば、病気に立ち向かうための「脳の底力」です。しかし、この運動予備能が病気の進行とともにどのように変化するのか、またどのような要因によって維持・強化できるのかは、これまで十分に理解されていませんでした。

 このたび、月田和人 医学研究科特定講師(兼:帝京大学特任研究員)、松本理器 同教授、髙橋良輔 総合研究推進本部特定教授らの研究グループは、国際多施設共同観察研究の大規模データを解析し、運動予備能の維持・向上には「適切なドパミン補充療法」と「日常的な運動習慣」が極めて重要であることを明らかにしました。さらに、発症早期に運動予備能を高く保つことが、長期的に介助が必要となる重度の運動障害への進行リスクを大幅に減らすことも示しました。 本研究成果は、パーキンソン病の症状進行抑制に向けた方向性を提示する成果として、今後の治療方針の構築に大きく貢献すると期待されます。

 本研究成果は、2025年12月26日に、国際学術誌「Neurology」にオンライン掲載されました。

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運動習慣を保ち、適切なドパミン補充療法を行うことで、運動予備能を高めることは、パーキンソン病の症状進行抑制に寄与する。

研究者のコメント

「今回の研究から、パーキンソン病の患者さんが本来備えている『運動予備能』という脳の底力は、診断後であっても維持し、高めていくことが可能であることが見えてきました。特に、発症初期の数年間で運動予備能を高く保てるかどうかが、その後10年以上にわたる重症化リスクにまで影響し得るという結果は、患者さんの長期的な生活の質を考えるうえで非常に大きな意味を持つと感じています。今後は、どのような運動が最も効果的なのか、またどのような治療の組み合わせが患者さん一人ひとりの状態に最適なのかをさらに明らかにし、実践的で続けやすい診療指針の確立につなげていきたいと考えています。また、今回の成果が、患者さんが前向きに治療へ取り組むための励みとなれば、とても嬉しく思います。」(月田和人)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1212/WNL.0000000000214475

【書誌情報】
Kazuto Tsukita, Akihiro Kikuya, Kenji Yoshimura, Etsuro Nakanishi, Riki Matsumoto, Ryosuke Takahashi (2026). Temporal Dynamics and Cross-Sectional and Longitudinal Factors Associated With Motor Reserve and Outcome in Patients With Parkinson Disease. Neurology, 106, 2, e214475.