南部雄亮 複合原子力科学研究所特定教授らの国際共同研究グループは、非希土類材料として室温で最大級の磁歪(形が変わる磁石の性質)を示す酸化物 CoFe2O4(コバルトフェライト)の内部で何が起きているのか、その根本的な仕組みを中性子散乱と理論解析により解明しました。
CoFe2O4は逆スピネル構造をもち、異なる位置にある鉄イオンとコバルトイオンがつくる「分子場」の大きさの差が非常に大きいことが特徴です。本研究では、この分子場の不均衡がマグノン(スピン波)のエネルギーを約60 meVも分裂させる「バンド分裂」を生み、その結果として構造ドメインの切り替えが磁場で起きやすくなり、巨大磁歪を引き起こすことを明らかにしました。また、マグノンの低エネルギーモードに3 meVの異方性ギャップが存在することも確認し、室温付近での磁気安定性を支える重要な要因であることを示しました。
今回得られた知見は、低電力で動作する磁歪アクチュエータやスピン熱電デバイスの開発など、産業・医療応用に向けた材料設計の新たな指針を提供します。
本研究成果は、2025年11月12日に、国際学術誌「Advanced Functional Materials」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「CoFe2O4は古くから重要な磁性材料でしたが、その内部でどのように磁歪が生まれているかは謎のままでした。本研究では、マグノン励起を広いエネルギー範囲で捉え、分子場の不均衡が巨大磁歪を生み出す本質的な要因であることを明確に示すことができました。今後は、この知見をもとに環境調和型で高性能な磁気デバイスの実現につなげていきたいと考えています。」
【DOI】
https://doi.org/10.1002/adfm.202516830
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/299550
【書誌情報】
Harry Lane, Guratinder Kaur, Masahiro Kawamata, Yusuke Nambu, Lukas Keller, Russell A. Ewings, David J. Voneshen, Travis J. Williams, Helen C. Walker, Dwight Viehland, Peter M. Gehring, Chris Stock (2025). Anisotropic Band‑Split Magnetism in Magnetostrictive CoFe₂O₄. Advanced Functional Materials, 36, 17, e16830.