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公開日
大塚敏之 情報学研究科教授は、株式会社日立製作所と共同で、都市や地域などのコミュニティごとの多様な価値観をリアルタイムに反映しながら、仮想発電所(VPP)を安定的に運用できる新たなシステム制御技術を開発しました。本技術は、従来の「経済性最大化」などの固定的な指標だけでなく、CO2削減や利便性など、状況に応じて変化する価値観をシステム制御に柔軟に組み込むことができます。この実現に向け、モデル予測制御(MPC)による動的なエネルギー資源配分と、Preference Learning(選好学習)による価値観の自動反映、さらに安定稼働を実現するロバスト制御技術を開発しました。シミュレーションによる検証では、CO2排出量重視で最大約20%削減、コスト重視で約16%低減を達成し、コミュニティごとの異なる価値観に応じた安定運用が可能であることを確認しました。今後、地域参加型の実証を重ねながら実運用での効果検証や技術の高度化を進め、地域社会の多様な価値観を反映したエネルギー運用を推進し、持続可能な社会と人々の豊かな暮らしの実現に貢献します。
本研究成果の一部は、2025年10月5~8日にオーストリアで開催された研究集会「IEEE SMC(Systems, Man, and Cybernetics)」で発表されました。
研究者のコメント
「MPCはさまざまな対象を扱える汎用性の高い制御手法ですが、何を最適化するかは人間が決めなければならず、それは必ずしも自明ではありません。人間が意識すらしない好みや価値基準もあり得ます。本研究では、選好学習を取り入れてVPPの安定運用とコミュニティの価値観反映を両立できました。同様の考え方は人間を含むさまざまなシステムの最適運用に応用できると思います。」
研究者情報
研究者名
大塚 敏之
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