※「詳しい研究内容について」(PDF)を一部修正しました。(2025年11月10日)
山尾僚 生態学研究センター教授、大崎晴菜 名城大学助教、廣田峻 福島大学准教授、弘前大学、イスラエル・ネゲヴ・ベン・グリオン大学(Ben-Gurion University of the Negev)の研究チームは、日本の在来植物であるオオバコ(Plantago asiatica)が塩ストレスを受けた際に、地上と地下の両方を通じてストレス情報を他の個体に伝達していること、さらに情報が伝わる相手が地上部と地下部で異なることを明らかにしました。塩ストレス情報は、地下部の根を介した場合、同じ親個体由来のきょうだい個体間で伝達されやすい一方、地上部の空気(揮発性化合物など)を介した場合は、遺伝的な差異に関係なくすべてのオオバコ個体に伝わり、塩ストレスに対して有効と考えられる気孔を閉じる反応を誘発することが分かりました。これらの結果は、地上部と地下部の情報伝達がそれぞれ異なる機能をもつことで複雑な個体間の情報伝達が行われている可能性を示しています。今後は、このような情報のやりとりがオオバコの生存や成長、そして集団全体のストレス耐性にどのように影響しているのかを詳しく調べることで、植物の集団レベルでのストレス耐性機構の解明が期待されます。
本研究研究は、2025年8月12日に、国際学術誌「Plant Signaling & Behavior」に掲載されました。
「地上部と地下部で情報が伝わる相手が異なるという結果は、私たちも予想していなかった興味深い発見です。この違いはオオバコにとって、多様な環境で生き延びるための戦略のひとつである可能性があります。今後は、こうした情報伝達の仕組みがどのように生まれ、高度化してきたのかを紐解き、植物の巧みなコミュニケーション能力の進化プロセスにも迫りたいと考えています。」(大崎晴菜)
「一般に、同種の他個体は競争相手とみなされます。それにもかかわらず、一見すると競争相手を利するような現象は、なぜ進化したのでしょうか。また、地下部と地上部で情報が伝達される相手に違いがあることには、どのような適応的意義があるのでしょうか。本研究の成果はこうした疑問を提起し、複雑な生物間相互作用の解明に向けた足掛かりとなります。今後の研究の展開に是非ご期待ください。」(廣田峻)
【DOI】
https://doi.org/10.1080/15592324.2025.2542560
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/296636
【書誌情報】
Kai Ito, Haruna Ohsaki, Ariel Novoplansky, Shun K. Hirota, Akira Yamawo (2025). Integrated above- and below-ground interplant cueing of salt stress. Plant Signaling & Behavior, 20, 1, 2542560.