もやもや病は内頚動脈が進行性に狭窄する病気です。この病気に対して脳血流を改善するための手術(バイパス手術)が行われますが、手術後2週間以内に一過性の神経症状(TNEs)が出現することが知られています。過去の研究から手術後の急な脳血流変化が原因と考えられていましたが、その根本原因は不明であり、簡便な診断法もありませんでした。
池田昭夫 医学研究科特定教授、宇佐美清英 同助教、菊池隆幸 同准教授、荒川芳輝 同教授、林梢 同博士課程学生(研究当時)らの研究グループは、過去の研究(画像検査では検出困難な血流変化を、頭蓋内脳波の超低域徐波 (< 0.1 Hzの遅い波)が検出できる可能性がある)に基づき、簡便かつ安全な頭皮脳波を使って、TNEsと超低域徐波(ISA;< 0.3 Hz)を含む脳波変化の関連性を検討しました。TNEsが出現した患者さんではδ波(1-3Hz)が増加して出現し、また、ISAは症状出現日にのみ認め、病態との関係が示唆されました。今後は他疾患が原因となるものも含めて、TNEsにおける頭皮脳波の変化について検討を進めていく方針です。
本研究成果は、2025年5月19日に、国際学術誌「Clinical Neurophysiology」にオンライン掲載されました。

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.clinph.2025.2110748
【書誌情報】
Kozue Hayashi, Kiyohide Usami, Masaya Togo, Yukihiro Yamao, Takeshi Funaki, Takefumi Hitomi, Takayuki Kikuchi, Masao Matsuhashi, Kazumichi Yoshida, Yoshiki Arakawa, Ryosuke Takahashi, Susumu Miyamoto, Akio Ikeda (2025). Infraslow scalp electroencephalogram is closely linked to transient neurological events in Moyamoya disease. Clinical Neurophysiology, 176, 2110748.