懐かしい思い出は世界中の人々を幸せにする―5大陸28カ国・地域の文化的共通性と差異―

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※ 詳しい研究内容について(PDF)を一部修正しました(2024年2月7日)

 楠見孝 教育学研究科教授、Erica G. Hepper 英国サリー大学教授、Constantine Sedikides 英国サウザンプトン大学教授ら38名の国際研究グループは、5大陸28カ国・地域の2,606人の成人(平均22.8歳)を対象に、昔のことを懐かしむ傾向性、懐かしさを引き起こすきっかけ、懐かしさの機能を検討しました。その結果、懐かしさが幅広い文化圏で頻繁に経験されていること、懐かしさのきっかけとしては、悲しさ・寂しさなどの心理的脅威(特に平均気温の高い国々)、写真・音楽などの感覚刺激(特に先進国)、コミュニティ・家族などの社会的集まり(特に発展途上国)が、懐かしさを引き起こしていました。実験的に誘発された懐かしさによる肯定的または否定的な感情は国によって異なりましたが、全体的には弱い強度でした。懐かしさの機能は、文化を越えて見出され、懐かしい出来事を思い出すことは、平凡な出来事と比較して、社会的なつながり、自己の連続性、人生の意味を増加させました。また、懐かしい出来事を思い出すことは、平凡な出来事と比較して、生活の質が低い国々(平均寿命と生活満足度が低い)での生活満足度を高めました。結論として、懐かしさの文化を越えた共通性と、その機能における文化的な細かな差異が明らかになりました。

 本研究成果は、2024年1月22日に、国際学術誌「Journal of Experimental Psychology: General」にオンライン掲載されました。

文章を入れてください
Nostalgia demonstrates benefits for well-being across cultures. (KyotoU/Jake Tobiyama)
研究者のコメント

「昔の何度も接した音楽、商品、友人は、懐かしさを引き起こします。本研究は、こうした懐かしさが幅広い文化圏で共通の経験であることを明らかにしたものです。懐かしさを経験することは、多くの文化圏において短期的に心理的な良い効果をもたらしていました。それはその国の発展レベルや生活の質によって、顕著であったり、そうでなかったりしました。このことから、懐かしさ研究は、国連の持続可能な開発目標3『すべての人に健康と福祉を』に心理学から貢献をする可能性を持っています。」

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1037/xge0001521

【書誌情報】
Erica G Hepper, Constantine Sedikides, Tim Wildschut, Wing Yee Cheung, Georgios Abakoumkin, Gizem Arikan, Mark Aveyard, Einar B Baldursson, Olga Bialobrzeska, Sana Bouamama, Imed Bouzaouech, Marco Brambilla, Axel M Burger, Sylvia Xiaohua Chen, Sylwia Cisek, Didier Demassosso, Lucía Estevan-Reina, Roberto González Gutiérrez, Li Gu, Rita Guerra, Nina Hansen, Shanmukh Kamble, Takashi Kusumi, Camille Mangelinckx, Veronika V Nourkova, Élena Pinna, Aino Rantasila, Timothy D Ritchie, Albina B Salikhova, Elena Stephan, Mihaela Sterian, Yuk-Yue Tong, Suzanne Van Even, Normando José Queiroz Viana, Ad Vingerhoets, Courtney von Hippel, Artem S Zatsepin, Bettina Zengel (2024). Pancultural nostalgia in action: Prevalence, triggers, and psychological functions of nostalgia across cultures. Journal of Experimental Psychology: General.