不眠症に対する認知行動療法の有効な要素を解明

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 坂田昌嗣 医学研究科助教、古川由己 東京大学特任臨床医、山本隆一郎 江戸川大学教授、中島俊 筑波大学准教授(研究当時:国立精神・神経医療研究センター室長)らの研究グループは、系統的レビューと要素ネットワークメタアナリシスを実施し、不眠症の認知行動療法の有効な要素を明らかにしました。

 本研究では、最先端の統計解析手法である要素ネットワークメタアナリシスを用いることで、複数の要素の組み合わせから成る不眠症の認知行動療法の要素ごとの有効性を世界で初めて推定しました。不眠症に対して認知行動療法が有効であることは実証されていましたが、複数の要素のうちのどの要素が有効なのかは知られていませんでした。本研究では、認知行動療法の構成要素まで詳細に検討することで、全体としてだけでなく要素ごとの有効性を検証し、睡眠制限法・刺激統制法・認知再構成・第3世代の手法(マインドフルネス等)・対面提供が有効であることを明らかにしました。一方、臨床現場でよく用いられている睡眠衛生指導やリラクゼーションの有効性は示されませんでした。この研究成果は今後、有効性の高い要素を含み、有効性の低い要素を省略した、効果的かつ効率的なプログラムの開発に繋がり、不眠症の認知行動療法の今後の普及を促進し、多くの方が悩む不眠症の改善につながることが期待されます。

 本研究成果は、2024年1月17日に、国際学術誌「JAMA Psychiatry」にオンライン掲載されました。

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不眠症に対する認知行動療法の有効な要素を解明
研究者のコメント

「不眠症に対して認知行動療法(CBT-I)の有効性は確立されており、各国のガイドラインでも第一選択となっています。しかし、CBT-Iは多くの要素を含む複雑介入であるがゆえに、普及が進まず、不眠に悩む方々になかなか届かないのがこれまでの現状でした。今回、有効要素が明らかになったことで、それをもとにより効果的で提供しやすいCBT-Iの形態が普及するきっかけとなれば幸いです。」(坂田昌嗣)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1001/jamapsychiatry.2023.5060

【書誌情報】
Yuki Furukawa, Masatsugu Sakata, Ryuichiro Yamamoto, Shun Nakajima, Shino Kikuchi, Mari Inoue, Masami Ito, Hiroku Noma, Hikari Nishimura Takashina, Satoshi Funada, Edoardo G. Ostinelli, Toshi A. Furukawa, Orestis Efthimiou, Michael Perlis (2024). Components and Delivery Formats of Cognitive Behavioral Therapy for Chronic Insomnia in Adults: A Systematic Review and Component Network Meta-Analysis. JAMA Psychiatry.

メディア掲載情報

日刊工業新聞(1月18日 29面)に掲載されました。