ミリ波を用いたダークマター探索手法を確立

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 ダークマターとは、宇宙の全エネルギーの1/4を占める謎の物質であり、銀河はダークマターで満たされています。我々の住む太陽系は銀河の中を公転運動しているので、ダークマターは今この瞬間も地球を素通りしています。しかしながら、それを捉えるのは非常に難しく、人類は未だその直接的な検出に成功していません。そのため、ダークマター1個あたりの質量すらわかっていません。

 安達俊介 白眉センター特定助教、小高駿平 理学研究科学生(研究当時)、本多俊介 筑波大学助教らの研究チームでは、電磁波の一種、ミリ波を観測する受信機を応用して、ダークマターを探索する実験手法を確立しました。ダークマター探索に特化した極低温のミリ波受信機を開発し、0.1ミリ電子ボルト付近の質量を仮定してダークマターの検出を目指す実験を行いました。残念ながら、その検出には至りませんでしたが、このような超軽量のダークマター探索実験を世界最高感度で行うことに成功しました。本研究で実験手法が確立されたことによって、さらなる前人未踏の質量領域にわたってダークマターを探索することも可能になりました。

 本研究成果は、2023年2月17日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント

「ダークマター探索実験は、素粒子物理学においては盛んな分野の一つであり、かつ大規模化も進んでいます。そのため、なかなか世界に先立って探索を行うということは難しくはなっていますが、小規模な実験なりに世界で初めての探索が行えたことに喜びを感じています。」(安達俊介)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.3847/2041-8213/acb25e

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/279600

【書誌情報】
S. Kotaka, S. Adachi, R. Fujinaka, S. Honda, H. Nakata, Y. Seino, Y. Sueno, T. Sumida, J. Suzuki, O. Tajima, S. Takeichi (2023). Search for Dark Photon Dark Matter in the Mass Range 74-110 μeV with a Cryogenic Millimeter-Wave Receiver. Physical Review Letters, 130(7):071805.