世界初のイネ根圏微生物叢の網羅的1細胞ゲノム解析に成功―コメ生産現場が抱える問題のデータベース化に向けて―

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 青木航 農学研究科助教、植田充美 産官学連携本部特任教授、間藤徹 名誉教授、竹山春子 早稲田大学教授、細川正⼈ 同准教授、松田修平 JST-COI-NEXT研究員らの共同研究グループは、微小なカプセルに微生物を閉じ込めて1細胞レベルでゲノムを解読する技術を活用し、宮内庁修学院離宮のイネの圃場を用いた実水田で、世界で初めて、イネの根圏微生物叢のゲノム情報を1細胞レベルで網羅的に明らかにすることに成功しました。本成果は、イネと微生物叢の相互作用を理解する上で必須のゲノムデータベースとなります。コロナ禍やウクライナ事件で、需要が伸びてきているものの、地球環境保全において、水田からのメタンガス放出による温暖化への影響など、地球上でのコメ生産における研究の重要性は増してきています。将来的には、イネの生育を促進する微生物叢デザインや、水田からのメタン発生を抑制するための微生物叢デザインなど、持続可能な農業の実現に向けて大きく貢献すると期待されます。

 本研究成果は、2022年11月3日に、国際学術誌「Frontiers in Microbiology」にオンライン掲載されました。

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取得された微生物叢ゲノムの系統樹

研究者のコメント

「イネは人類にとって最も重要な作物のひとつであり、コメとしての食糧供給の持続可能な社会を構築する上で、より低い環境負荷でイネを栽培できるようにすることが重要です。我々は、イネ根圏の微生物叢のゲノム情報を1細胞レベルで網羅的に明らかにすることに成功しました。このゲノムデータベースを拡張・利用することで、イネの栽培に資する有用微生物叢の発見・応用を加速させると期待されます。」(青木航)

メディア掲載情報

【DOI】
https://doi.org/10.3389/fmicb.2022.1024640

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/277073

【書誌情報】
Wataru Aoki, Masato Kogawa, Shuhei Matsuda, Keisuke Matsubara, Shintaro Hirata, Yohei Nishikawa, Masahito Hosokawa, Haruko Takeyama, Toru Matoh, Mitsuyoshi Ueda (2022). Massively parallel single-cell genomics of microbiomes in rice paddies. Frontiers in Microbiology, 13:1024640.