医療用モバイルアプリの日本語版客観的評価スケールのユーザー版開発に成功-アプリの選択基準となることを期待-

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 山本一道 医学研究科客員研究員、坂田昌嗣 同助教、古川壽亮 同教授らの研究グループは篠原義和 東京大学病院診療医、佐藤雅昭 同准教授、中島淳 同教授と、クイーンズランド工科大学との共同研究として、医療用アプリの国際的な客観的評価基準である「モバイルアプリ評価スケール(MARS)ユーザー版」の日本語版の開発、およびその信頼性と妥当性を検証しました。

 近年激増する医療用アプリの客観的評価は現状では十分に行われておらず、アプリによっては健康に害を与える可能性も指摘されており、トレーニングを受けた評価者による質的評価を行うツール開発が待たれていました。同研究グループは「モバイルアプリ評価スケール(MARS)」の研究者版を既に開発および信頼性と妥当性評価を行いましたが、本研究では疫学・医学・心理学・社会学・システム開発・医学翻訳の専門家らにより科学的手順により「ユーザー版」の日本語版評価スケールを開発し、現在東京大学が開発中である肺移植術後オンライン管理システムを用いてその信頼性および妥当性を確認しました。これらのツールにより開発者・研究者のみならず、アプリの使用者がアプリを選択する際の客観的な基準となることが期待されます。さまざまな医療アプリの研究、開発におけるアプリのアセスメントおよびユーザーによる医療アプリの選択などに使用され、今後の指針などにも役立つと考えられます。

 本研究成果について、2022年6月13日に、国際学術誌「International Journal of Medical Informatics」に掲載されました。

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図:本研究の着眼点。近年医療用アプリが急増している中で、どのようにアプリを選択して良いかの基準は曖昧。(作成:村山智紀)

研究者のコメント

「「デジタル化」という言葉が一人歩きし、科学的根拠に基づかないアプリや製品が溢れる中、科学的根拠に基づいた客観的な評価ツールは本邦におけるデジタル化を国際標準に対応した方向に導くために必須だと考えています。また研究者版に加えてユーザー版の開発により、開発者側からは測りにくいユーザーエクスペリエンスの向上にも非常に有用であることを確認できました。本ツールが本邦においてスタンダードとしてルーチンに使われることを期待しています。」(山本一道)

研究者情報
研究者名
山本 一道
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.ijmedinf.2022.104809

【書誌情報】
Yoshikazu Shinohara, Kazumichi Yamamoto, Masami Ito, Masatsugu Sakata, Shiho Koizumi, Mizuho Hashisako, Masaaki Sato, Muhammad Wannous, Stoyan R. Stoyanov, Jun Nakajima, Toshiaki A. Furukawa (2022). Development and validation of the Japanese version of the uMARS (user version of the mobile app rating system). International Journal of Medical Informatics, 165:104809.