後藤慎平 医学研究科特定准教授、曽根尚之 医学部附属病院医員、小西聡史 同客員研究員(研究当時)、鳥澤勇介 白眉センター特定准教授(研究当時)、月田早智子 帝京大学・大阪大学教授らは、マイクロ流体気道チップとヒトiPS細胞から分化誘導した気道上皮シートを組み合わせて細胞間の線毛協調運動を生体内に近い形で再現して機能評価する技術の開発に成功しました。さらに、本学医学部附属病院呼吸器内科、同呼吸器外科、三重大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科、富山大学附属病院小児科との共同研究で、線毛運動に関連する遺伝子変異によって引き起こされる難病である線毛機能不全症候群について、生体内に近い形でのモデル開発に成功しました。
線毛機能不全症は非常に多彩な遺伝子変異によって引き起こされることがわかっており、そのことが診断を難しくしている原因の1つでしたが、今回の研究成果により、患者の末梢血からiPS細胞を樹立して、気道上皮細胞に分化させることで、診断に役立つ可能性が見出され、病態を詳しく解析することが可能となりました。線毛機能不全症の原因かどうか分からない未知の遺伝子変異でも遺伝子修復をした細胞と比べれば、因果関係を証明することができ、治療につながる開発を進めることも可能になります。
本研究成果は、2021年7月8日に、国際学術誌「Science Translational Medicine」のオンライン版に掲載されました。
【DOI】https://doi.org/10.1126/scitranslmed.abb1298
Naoyuki Sone, Satoshi Konishi, Koichi Igura, Koji Tamai, Satoshi Ikeo, Yohei Korogi, Shuhei Kanagaki, Toshinori Namba, Yuki Yamamoto, Yifei Xu, Kazuhiko Takeuchi, Yuichi Adachi, Toyofumi F. Chen-Yoshikawa, Hiroshi Date, Masatoshi Hagiwara, Sachiko Tsukita, Toyohiro Hirai, Yu-suke Torisawa, Shimpei Gotoh (2021). Multicellular modeling of ciliopathy by combining iPS cells and microfluidic airway-on-a-chip technology. Science Translational Medicine, 13(601), eabb1298.
日刊工業新聞(7月8日 21面)に掲載されました。