遺伝子のスイッチを切り替えられる新化合物を開発 -進化する遺伝子治療:PIPで躍進-

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ガネシュ・パンディアン・ナマシヴァヤム 高等研究院物質–細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)講師、ユウ・ズタオ 同特定研究員、杉山弘 理学研究科教授(iCeMS連携主任研究者)らの研究グループは、特定のDNA配列に結合する分子に、遺伝子改変分子を結合して機能を持たせることのできる化合物を合成しました。

ピロール-イミダゾールポリアミド(PIP)は、特定のDNA配列を見つけて結合することができる分子です。本研究グループは、DNAと強力に結合し特定の遺伝子を標的として、その遺伝子の情報の発現をスイッチのようにオン・オフに切り替えさせることができる、ホスト-ゲスト複合体(HoGu)をPIPに組み合わせる方法を開発してきました(PIP-HoGu)。

しかし、これまでのPIP-HoGuには、特定の遺伝子を活性化する能力はありませんでした。そこで、本研究では、PIP-HoGuとエピジェネティック調節分子を組み合わせて、新たな化合物ePIP-HoGuを合成しました。そして、ePIP-HoGuが、より特異的に標的のDNA配列に結合し、その配列が巻きついているヒストンを効率的よく修飾し遺伝子を活性化できることを確認しました。

今後は、ePIP-Hoguの構成要素をさらに最適化することで、生物研究や治療分野への応用が期待されます。

本研究成果は、2020年1月15日に、国際学術誌「ChemComm」に掲載されました。

図:化学のアーミーナイフのごとく、新規DNA結合分子が複数のツールをまとめて1つの合成プラットフォームにします(イラスト: 高宮 泉水 iCeMS特定助教

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1039/c9cc09608f

Zutao Yu, Mengting Ai, Soumen K. Samanta, Fumitaka Hashiya, Junichi Taniguchi, Sefan Asamitsu, Shuji Ikeda, Kaori Hashiya, Toshikazu Bando, Ganesh N. Pandian, Lyle Isaacs and Hiroshi Sugiyama (2020). Asynthetic transcription factor pair mimic for precise recruitment of an epigenetic modifier to the targeted DNA locus. ChemicalCommunications, 56(15), 2296-2299.