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北村 隆行(きたむら たかゆき)

研究倫理、研究公正、研究規範、経済安全保障担当
副学長

メッセージ

 学術研究は、本来、自由かつオープンなものであり、研究者個人の興味によって知見を拡げてゆく姿が、その発展の基本と考えます。そして、学術研究の目線の先には、得られた知識体系を世界中の社会と共有するとともに次世代へと継承し、さらに、その知識体系に基づいて持続可能でよりよい生活や社会の実現に導くことがあります。

 さて、学術研究の基本が研究者個人の活動であるがゆえに、名誉心などの様々な要因によって社会的に不公正とみなされる事案が発生してきたことも事実です。とくに、現代においては、社会に及ぼす科学技術の影響が大きくなるとともに、研究の公正性に対する厳しい目に繋がり、研究者としての高い倫理感がいっそう求められる時代となってきたことを意味しています。
 また、このような学術研究と社会との関連性の流れの中で、研究者は利益相反の考え方などさらに多くのことに意識を高めることを求められるようになってきています。その証左として、研究の正当性や社会への責任を指す研究インテグリティという語をよく聞くようになりました。さらに、種々の社会的リスクから研究コミュニティを保護することを意味する研究セキュリティなる言葉も使われだしています。これらは最近になって急速に対応が求められるようになったことであり、いまだ曖昧な内容を含んでいることは否めません。加えて、冒頭に書いた自由でオープンな学術研究と相反する危険性をも含んでいます。

 私は、2年前から研究倫理、研究公正、研究規範を担当してきました。京都大学においても、研究論文や研究費の不正についてルール整備を進めるとともに、構成員の皆さんへの周知徹底につとめてきました。また、全学キャラバンで多くの方々とお話する機会があり、これらの課題に対して多くの教職員に高い意識を持っていただいていることを肌身で感じることができました。
 ただし、気を緩めていると危険は気づかぬうちに身近に忍び寄ってくるのは、意識問題の常です。また、倫理性や公正性といった物理的・論理的にすっぱりと割り切れるものではないものが対象であり、各学術分野の歴史や個性による違いや社会情勢の変動に関連して現在も規範の整備が続いているのが現状です。このような中で、私は、闊達なコミュニケーションを通して、高い倫理性を持って自由かつオープンな学術研究が行われる環境とともに、研究者が安心して研究に邁進できるルール、システム、組織等の整備をいっそう進めたいと考えています。全学の教職員・研究者・学生の方々のご尽力に深く感謝申し上げるとともに、今後ともご協力をお願い申し上げます。