
岩井 一宏(いわい かずひろ)
企画・調整、附属病院担当
プロボスト
副学長
メッセージ
このたび、プロボストならびに企画・調整、附属病院担当の理事・副学長を拝命いたしました。着任前の4年間は医学研究科長・医学部長を務め、研究推進、人材育成、また、京都大学の関連病院との連携などについて、主に医学研究の視点からその発展に注力してまいりました。一方で、全学的な立場で大学運営に携わる機会がほとんどありませんでしたので、非常に身の引き締まる思いでございます。
京都大学は創立以来、「自由の学風」の下、優れた研究者が健全な好奇心に基づいて自由な研究を展開し、傑出した多くの人材を育成するとともに、アジアで最多のノ−ベル賞受賞者を輩出するなど、世界に向けて独創性の高い研究を発信してきました。これまでは数人の研究者が集まった小さな単位で世界をリードする研究を進めることも可能でしたので、京都大学をはじめとした日本の大学のシステムが強さを発揮して世界的な業績を生み出すことができたのかもしれません。
しかし、研究機器や解析手法が高度化した現在においては、研究を取り巻く環境が大きく変化し、旧来の小さな研究体制では十分対応できない状況が生まれつつあります。また、新たなパラダイムシフトを起こすような研究は、ある特定の研究領域だけではなく、複数の研究領域に跨がる総合的な知の創造から生まれることが多くなってきています。加えて、このような公正な研究活動を推進するための研究倫理の徹底、コンプライアンスの遵守など、研究者が果たすべき役割は増大しています。世界における研究の趨勢を踏まえれば、日本の大学の枠組みが今のままでは、世界レベルの研究を遂行することが困難になるだろうと考えています。
このように変わりゆく情勢の中で、京都大学に所属する研究者が、引き続き自主自由な研究を展開できるような環境を可及的に整備・強化すること、そしてその成果を速やかに社会実装できる体制を構築することが喫緊の課題であろうと思います。そのためには、研究者が最先端の解析機器、技法にアクセスできるようにするとともに、それぞれの研究者がexpertise(専門性)を大切にしつつ、異分野交流を含む学際的な共同研究を推進していくことが重要です。さらに、最新技術に精通し、高いポテンシャルを有する若手研究者が思う存分研究に専念できるよう、研究を取り巻く種々の業務をサポートできる人材を配置することも必要でしょう。ひいては、研究者が生み出した独創的な研究成果のシーズ化を進め、本学の理念でもある「地球社会の調和ある共存」に向けて、持続可能で豊かな生活の実現に少しでも貢献したいと考える次第です。
研究は本質的には研究者個人の発想に由来するものであろうと思います。それゆえ、京都大学の伝統である「自由の学風」を堅持しつつ、研究者個人の自由意志による研究活動を尊重するとともに、DEI(Diversity, Equity and Inclusion)に配慮し、多彩なバックグラウンドを持つ研究者が研究しやすい環境を整備することで、世界から優れた研究者が集い、闊達なインタラクションを通じて次世代を担う人材育成が叶うような大学づくりに邁進したいと思っております。何よりこれらの実現にあたっては、大学構成員による総意と、社会の皆様からのご支援が不可欠です。若手研究者をはじめとする現場の構成員や、ステークホルダーの皆様のご意見に積極的に耳を傾け、京都大学からさらに多くの創造的な研究成果を広く発信し、世界に伍する大学を目指して大学改革を進められるよう、微力ながら尽力してまいりたいと存じますので、皆様のご協力を心からお願い申し上げます。