アクションプラン(2022年度~2027年度)

京都大学男女共同参画推進アクションプラン(2022年度~2027年度)

1. アクションプランの設定にあたって

 ジェンダー平等社会の実現は、多様な視点の共存と相互の寛容性に基づく創造的で豊かな社会の基盤であり、次世代の育成を担う大学はその中核としての役割を求められています。また、人口減少社会において、女性研究者を積極的に育成することは、優秀な人材の確保と大学の活性化にとっても喫緊の課題です。
 本学にとっても、ジェンダー平等の理念に基づき、優秀な女性研究者を育成・獲得することは、自由の学風の下で創造的な知の創出をリードする研究大学としてさらに発展していく上で重要な課題です。

 本学では、2006年3月に男女共同参画の基本理念と基本方針を決定し、2009年および2015年には男女共同参画推進アクションプランを策定しました。
 しかしながら、本学の女性教員比率は、上昇傾向を示してきたものの、他大学と比較すると低い値で推移しています。また、本学の女性比率は、多くの分野において博士課程学生から教授まで段階を経るほどに低下しており、特に助教の女性比率の伸び悩みは、女性にとって研究職につくことに対するハードルが存在する可能性を示しています。このままの状況が続くのであれば、本学のジェンダー平等推進への姿勢が問われることにもなります。

 同様に、本学の女子学生比率においても、低い値で推移している学部・研究科が少なくありません。特に理工系の学部・研究科では、女子学生増加のための取組を実施してはいるものの、なお女子学生比率の向上につながっていないのが現状です。理工系の博士課程に進学する女子学生の増加は、当該分野における将来の女性教員の確保と同時に、それを通した我が国における科学技術のイノベーション創出にとって重要な課題であり、より実効性のある取組が必要です。

 近年、将来の進路に関する女子学生の選択肢が広がるに伴い、大学が選択する側ではなく、選択される側になりつつあります。そうした状況も踏まえて、優秀な女性研究者の育成・獲得ならびに、女子学生の増加および志望分野の広がりをスピードアップして進めていく必要があります。

 本学では、以上の認識を基礎として、「京都大学男女共同参画推進アクションプラン(2022年度〜2027年度)」を策定しました。このアクションプランの実施を通じて、教職員・学生全体で本学におけるジェンダー平等をさらに推進していきます。

2. 達成目標(数値目標)の設定

 これまで、本学では女性教員比率に係る数値目標の設定を行ってきていませんでしたが、大学執行部および各部局の努力を促すために数値目標を設定し、その達成のためのアクションプランを策定します。

  1. 全学の女性教員比率(特定教員を含む)を2027年度に20%とする。
    2027年度に全学の女性教員比率(特定教員を含む)を20%とする目標値を設定します。
  2. 役員会構成員の女性比率を2027年度に25%とする。
    総長、理事で構成する役員会の女性比率を、2027年度に25%とする目標値を設定します。

3. 京都大学として取り組むべき事項

 女子学生の増加が将来の女性教員候補者の増加につながるものであると同時に、ロールモデルとなる女性教員の増加は研究者を志す女子学生の増加につながるものでもあるように、各段階の女性比率は相互に影響を及ぼしあう関係にあります。

 つまり、本学が優秀な女性を育成・獲得するためには、教員、大学院生および学部生それぞれの段階に応じた取組を行う必要があります。加えて、本学の構成員、とりわけ採用に関わる教員が、誰もが持っている「無意識のバイアス」の存在を理解する必要があり、さらには、これらの施策の実施を担う全学組織の強化も欠かせません。

 これらのことを踏まえて、本学におけるジェンダー平等を推進していくために、以下の(1)から(4)の取組を行います。

(1)女性教員の増加策 

ア. 女性教員の採用・昇任促進策の実施

 本学では、博士課程学生から教授までの段階を経るごとに女性比率が低下しており、中でも、博士課程学生と比較した助教の女性比率の低さは、研究職に就く段階におけるハードルの存在可能性をうかがわせます。そのため、女性教員の採用・昇任のハードルが何かを分析するとともに、可能な限りそれらを排除するための取組を早急に実施する必要があります。

 本学ですでに実施している女性限定の教員採用や昇任に対するインセンティブ付与は、ジェンダーアンバランスな環境への挑戦を後押しする即効性や、部局等におけるアクションプランの幅を広げる効果が期待できます。インセンティブ付与による女性教員の積極的採用・昇任の促進は、優秀な研究者を確保するための有効な手段であるのみならず、採用された女性教員が、女子学生に対してロールモデルを示すことやメンター的な役割を果たすことにより、将来の女性研究者の増加につながることも期待できます。採用・昇任の応募および審査に際しての無意識のバイアスの影響を取り除いて実質的な機会均等を確かなものとするためにも、一定の期間、少なくとも女性教員比率を一定程度引き上げるまでは、現行制度を見直した上でインセンティブ付与を実施します。

(ア)採用・昇任審査に当たる教員への無意識のバイアスの影響を取り除くための取組 

(イ)出産・育児期間等を配慮した教員の採用・昇任審査の義務づけ 

(ウ)採用・昇任インセンティブ

  • 定員の上位流用を認める制度の創設を検討する。
  • 女性教員の採用を促す定員または雇用経費等の措置制度の創設を検討する。
  • 白眉プロジェクトにおいて、女性比率向上のための措置を検討する。
イ.  教育・研究活動と育児等の両立のための支援充実・環境整備

 ライフイベントの影響による優秀な研究者の研究継続の断念や他大学への流出を防ぐためには、出産や育児・介護と教育・研究活動との両立のための支援策の充実や就業環境・施設環境の整備が必要です。主体的に育児・介護に携わる研究者に向けたこれらの取組は、男女を問わず本学の将来を担う次世代の若手研究者を引き付けることにもなるため、的確な情報提供も含め、早急に対応します。

 研究・実験補助者雇用制度は、分野によっては育児・介護に関わる研究者が研究を継続するために重要であることから、これを最大限拡充します。

また、育児支援施設の整備についても、教職員・学生のニーズおよび周辺の保育施設の定員充足状況も勘案しながら、実質的な支援策について検討します。

(ア)研究継続

  • 研究・実験補助者雇用制度を拡充する。

(イ)就業環境

  • 主体的に育児・介護に携わる教員について、在宅勤務を可能とする環境整備を行う。 
  • 小学校3年生以下の子供を育児中の教員について、委員会業務等を軽減する取組を行う。
  • 主体的に育児・介護に携わる教員が参加できるように会議ルールの見直しを行う。

(ウ)情報提供

  • 本学の育児支援策や育児・介護と教育・研究両立に関する情報を教職員や学生、本学の教員公募情報に関心のある研究者に周知する。
  • 個々の研究者のニーズを踏まえた、育児・介護、キャリア形成に関する適切な支援制度を紹介する相談窓口を設置する。

(エ)施設

  • 教職員・学生のための学内保育施設の設置等について検討する。
  • 授乳可能なスペース等を教職員・学生が使用する主要な建物に設置する。
ウ.  ジェンダー平等促進に資する教育・研究の機会拡大

 本学の教員および学生の女性比率を向上させるためには、ジェンダー平等の視点に立った教育・研究の機会を拡大する必要があります。その実施に際しては、女性教員だけではなく、性別を問わず幅広い教員の参画を得るとともに、大学全体として効率的・効果的に推進するために、教員間・部局間の連携を図るように留意します。

  • ジェンダード・イノベーションズ等に関わる教育・研究プロジェクト支援事業の創設を検討する。

(2)女子学生の増加策

 本学の女子学生比率の向上は、ジェンダーバランスの改善に加えて、将来の女性教員候補者の育成という意味でも重要です。女子学生の進学を全学的に推進するために、様々な分野で女子の進路選択におけるハードルを除くとともに、研究の魅力を女子学生に伝える取組を実施します。特に、現時点で女子学生比率が著しく低い学部・研究科や修士課程・博士後期課程等に内部進学する際に女性比率が減少する研究科においては、女子志願者の増加に向けた取組をさらに積極的に進めるものとします。

  • 女子学生を中心とした研究プロジェクト(学術研究・政策提言)支援事業の創設を検討する。
  • 修士課程・博士後期課程等に内部進学する際に女性比率が減少する研究科を中心に、各研究分野の魅力等を伝え、女子学生の大学院進学を促すイベント開催等を行う。
  • 女子中高生の関心が低い分野を中心に、各研究分野の魅力を伝えるため、主に中高生に向けた教育方法の開発推進やコンテンツ作り、イベント開催を行う。 
  • 特色入試を活用する。
  • オープンキャンパスにおいて女子高校生が参加しやすい取組を実施する。 
  • オープンキャンパス等で、女子高校生の保護者や進路指導担当教師に働きかける機会を増やす。
  • 本学の女性教員および各界で活躍する本学出身の女性についての紹介や、女子学生に対する企業等の採用ニーズの高まりに関する情報発信を強化する。 

(3)ジェンダー平等促進の意義の共有

 女性比率の向上は、本学の研究力を維持・向上させ、本学の教育・研究に多様な視点を取り込んで新たな価値を創造し続けるために欠かせない目標であるという認識を共有する必要があります。

 社会の各分野で指導的な立場に立ち、重要な働きをすることができる人材の育成を目指す本学においては、無意識のバイアスの存在を理解し、ジェンダー平等を推進できる人材を育成し、これらを実現するための取組を実施します。

  • ジェンダー平等促進の意義を全学的に共有し、本学の取組を周知するための研修を実施する。
  • ジェンダー平等、ジェンダード・イノベーションズを扱う科目を拡充する。

(4)男女共同参画に係る体制の強化

 以上の取組の実現のためには、実施体制の強化が不可欠です。そのため、男女共同参画担当理事の下、早急に全学組織と事務体制の整備・強化を図ります。また、各部局との連携はもちろん、他の全学組織とも協力して取組を進めます。

  • 全学的な戦略立案体制を構築する。
  • 担当事務体制の充実とともに、事務本部関係各部の参画により実施体制を強化する。
  • 部局における男女共同参画に係る体制を強化する。