線幅20nm磁壁移動メモリ素子の動作を実証-優れた微細化特性と高速・低消費電力性能を確認-

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用語説明・注釈

「これ以上小さくしても性能が上がらない」

半導体論理集積回路の最も重要な構成要素であるMOSトランジスタにおいては微細化によりリーク電流が増大しており、その結果、最近の集積回路では待機時(非動作時)の消費電力の増大が深刻化しています。また現在の半導体論理集積回路では演算を司るロジック部と記憶を司るメモリ部がグローバル配線で接続されて別々に配置されていますが、微細化(高集積化)に伴う扱う情報量の増加により配線数、配線長が増大しており、結果として情報転送の際の充放電に伴う電力の消費や配線遅延による処理速度向上の頭打ちの問題も顕在化してきています。

「これ以上小さく作れない」

集積回路のメインメモリなどに使われているDRAMは、キャパシターにおける電荷の充電状態で情報を記憶し、安定動作のためにはキャパシターは十分な静電容量を有している必要があります。キャパシターは集積回路中に溝を掘って形成され、この溝の深さを増すことでこれまでは微細化に伴う静電容量の減少に対応してきましたが、現在その加工限界が近づいています。またSRAMも微細化に伴うしきい電圧のばらつきの増大により、回路動作マージンの確保が難しくなっています。

不揮発性スピントロニクス素子

SRAMやDRAMは情報の保持のためには電源電圧を供給し続ける必要がありますが(揮発性)、スピントロニクス素子では電源が遮断されても記憶情報を保持し続けることができます。このような性質を「不揮発性」と言います。揮発性のメモリを不揮発性のメモリで置き換えることで待機時の消費電力を劇的に低減することができます。

3端子型磁壁移動メモリ素子

強磁性体において磁化方向の揃った領域のことを磁区と言い、磁区と磁区の境界領域のことを磁壁と言います。磁壁を貫通する方向に電流を流すと、角運動量保存則と量子力学的な効果から磁壁が伝導電子の方向に移動することが知られており、これを電流誘起磁壁移動と言います。3端子磁壁移動素子においては電流誘起磁壁移動によって強磁性細線中の磁化の方向を反転させることで情報の書き込みを行います。また情報を読み出す際にはトンネル磁気抵抗効果を利用します。3端子磁壁移動素子では読み出しと書き込みで電流経路が異なるのが特徴であり、これによって大きな動作マージンが得られるため、高速で信頼性の高い動作が実現できます。

SRAM

Static Random Access Memoryの略

DRAM

Dynamic Random Access Memorの略