北海道の海には2タイプのシャチがいる―北海道の海に現れるシャチのエコタイプ解明―

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 鈴木百夏 野生動物研究センター博士後期課程学生、三谷曜子 同教授、佐藤悠 同助教、村山美穂 同教授、河合真美 北海道大学修士課程修了生、早川卓志 同助教、松田純佳 同研究員、松石隆 同教授、北夕紀 東海大学教授、大泉宏 同教授、塩崎彬 国立科学博物館研究員、田島木綿子 同研究主幹、故・山田格 同名誉研究員、西田伸 宮崎大学教授、蛭田眞平 昭和医科大学准教授、中原史生 常磐大学教授、独立研究者の斎野重夫氏、宇仁義和 東京農業大学教授、天野雅男 長崎大学教授、吉岡基 三重大学名誉教授らの研究グループは、北海道に来遊するシャチが、北太平洋で広く見つかっているresident(レジデント)とtransient(トランジェント)という2つのエコタイプに属することを解明しました。

 シャチは世界中の海に生息しており、利用するエサなどの生態的特徴や遺伝的な違いを総括して「エコタイプ」という複数のグループに分かれると言われています。特に北太平洋東部では魚食性で主にサケを食べるresidentと、哺乳類を食べるtransient、サメを食べるoffshore(オフショア)という3つのエコタイプに分かれます。日本では、北海道東部の羅臼沖や釧路沖で、毎年シャチが姿を見せますが、「彼らがどのエコタイプに属するシャチなのか」という基本的な情報がありませんでした。観察ベースの情報やミトコンドリアDNAの一部の解析から、哺乳類食性のシャチが存在することはわかっていましたが、魚食性のシャチの捕食行動は観察されておらず、さらにミトコンドリアDNAの部分解析ではresidentとoffshoreの判別が不可能でした。そこで、世界中のシャチでエコタイプ分類に利用されているミトコンドリアゲノム(ミトコンドリアDNAの全長配列)を利用し、北海道東部のシャチのエコタイプ解明に挑みました。本研究では、北海道周辺のシャチ25個体のミトコンドリアゲノムを解読し、北太平洋のシャチの配列と比較しました。その結果、北海道の海に来遊するシャチは、residentとtransientのエコタイプに属することがわかりました。 

 北海道では、シャチが観光業や水産業などに深く関与し、人とシャチの関わりが深まっています。今回の成果は、北海道のシャチの生態を知ることに繋がり、海洋生態系や人との関係を理解するための重要な一歩となりました。

 本研究成果は、2025年12月17日に、国際学術誌「Marine Mammal Science」にオンライン掲載されました。

画像
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北海道のシャチのエコタイプ(左上地図の赤色部分は、シャチがよく見られる海域を示している。)

研究者のコメント

「本研究では、日本のシャチで初めてエコタイプを解明することができました。見つかった2つのエコタイプはすでに太平洋で発見されているものでしたが、両エコタイプの間でミトコンドリアゲノム配列の多様性が大きく違うこともわかりました。シャチの研究が進んでいる海外では、遺伝系統の違いに基づいて分けられたグループごとに、保全管理策を立てているところもあります。しかし、北海道のシャチにおいては、各エコタイプの生態的な違いや保全状況についての情報がまだ不十分です。今後も、行動観察や遺伝解析といった幅広い手法を用いて、より多くの個体から情報を集めていきたいと思います。」(鈴木百夏)

研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1111/mms.70107

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/298955

【書誌情報】
Momoka Suzuki, Mami Kawai, Takashi Hayakawa, Yuki F. Kita, Yu Sato, Miho Inoue-Murayama, Akira Shiozaki, Shin Nishida, Shimpei F. Hiruta, Hiroshi Ohizumi, Fumio Nakahara, Shigeo Saino, Yoshikazu Uni, Ayaka T. Matsuda, Takashi F. Matsuishi, Yuko Tajima, Masao Amano, Tadasu K. Yamada, Motoi Yoshioka, Yoko Mitani (2026). Whole Mitochondrial Genome Analysis of Killer Whales Reveals the Presence of Resident and Transient Ecotypes Around Hokkaido. Marine Mammal Science, 42, 1, e70107.

メディア掲載情報

読売新聞(2026年2月8日 25面)に掲載されました。