ボノボはチンパンジーよりも頻繁にアイ・コンタクトする

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狩野文浩 霊長類研究所特定助教、平田聡 野生動物研究センター教授は、ジョセップ・コール博士(ドイツ・マックスプランク人類進化研究所)との共同研究を行い、ヒトに進化的に最も近縁な類人猿2種、ボノボとチンパンジーのアイ・コンタクトについて赤外線式アイ・トラッキング(無害に視線を測定する方法)を用いて調べ、ボノボはチンパンジーよりも頻繁にアイ・コンタクトすることを発見しました。

本研究成果は、6月15日付けで、米国科学誌「PLOS ONE」誌に掲載されました。

研究者からのコメント

ヒトの心の進化を探求するうえで、チンパンジーとボノボの比較が役立つことを証明した研究です。また、本研究は、日本の熊本サンクチュアリに平成25年と平成26年にかけて、6個体のボノボが導入された後に発表される、初めてのボノボの研究論文となります。

概要

アイ・コンタクトは他者の目を見つめることであり、ヒトや他の霊長類の社会的生活において、重要な役割を担っています。多くの霊長類においては、他者の目を見つめることは脅しの意味があるために、ヒトのように、親愛の情を持って、他者の目をじっと、持続的に見つめる霊長類種は多くありません。しかし、ヒトに最も近縁なボノボとチンパンジーにおいては、ヒトのように、他者の目を親愛の情を持って見つめることが知られています。たとえば、親子の間で、異性の間で見つめ合う、仲直りの前に見つめ合う、などです。ただし、ボノボとチンパンジーの間でどのような差があるかは知られていません。

実験では、仲間のボノボとチンパンジーの顔写真や、全身の写真計90枚をモニタ上に提示して、それを見ているときのチンパンジー計20個体とボノボ14個体の視線の動きを、アイ・トラッカーという、視線追従装置を用いて、記録しました(図)。結果、ボノボはチンパンジーよりも、写真の目を1.5倍長く見つめました。


図: 研究に使った顔写真の例と、この写真をチンパンジーとボノボが見た際の注視点の場所を重ね合わせたもの

詳しい研究内容について

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0129684


[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/210283

Fumihiro Kano, Satoshi Hirata, Josep Call
"Social Attention in the Two Species of Pan: Bonobos Make More Eye Contact than Chimpanzees"
PLOS ONE 10(6) e0129684 Published: June 15, 2015

  • 日本経済新聞(6月21日 34面)に掲載されました。