研究者情報
研究者名
Kotaro Suzuki
研究者名
城 友泰
研究者名
新井 康之
研究者名
長尾 美紀
研究者名
山下 浩平
研究者名
髙折 晃史
概要
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、再発・難治性B細胞リンパ腫に対する画期的な治療法ですが、腫瘍細胞だけでなく正常B細胞も標的になるため、治療後に血液中のガンマグロブリン(抗体)が減少する低ガンマグロブリン血症を生じます。低ガンマグロブリン血症は感染症の発症や重症化と関連する重要な合併症ですが、持続する期間やリスクの高い患者さんについて十分な実臨床データがありませんでした。
そこで、鈴木光太郎 医学研究科博士課程学生、城友泰 医学部附属病院助教、新井康之 同講師(細胞療法科・診療科長)、長尾美紀 同教授(細胞療法センター・センター長)、山下浩平 同特定准教授(血液内科・診療科長)、髙折晃史 同教授(病院長)らの研究グループは、CAR-T細胞療法を受けたB細胞リンパ腫の患者さん76例を対象に、治療前から治療後2年間の血清ガンマグロブリン値の推移を解析しました。その結果、CAR-T細胞投与後6か月までに64%が低ガンマグロブリン血症を発症し、ガンマグロブリン値は9か月後に最低となり、2年後まで低値が持続することが明らかになりました。さらに、低ガンマグロブリン血症の発症リスクを解析したところ、(1)60歳以上、(2)CAR-T投与前のガンマグロブリン低値(IgG値 600mg/dL未満)、(3)CAR-T投与前の末梢血T細胞のCD4/CD8比0.3未満がリスク因子として同定されました。本研究は、CAR-T細胞療法後には長期間免疫低下が持続することと、リスクが高い患者さんを治療前に予測できる可能性を示したもので、免疫能の長期的観察や、感染症対策の最適化に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年8月28日に国際学術誌「Blood Immunology & Cellular Therapy」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「CAR-T細胞療法によってリンパ腫を長期に寛解状態に維持できる患者さんが増える中、感染症の管理の重要性が増しています。今回の研究では、免疫を支えるガンマグロブリン(抗体)の低下がCAR-T細胞投与後9か月頃に最も強くなり、少なくとも2年後まで持続することが分かりました。また、年齢や治療前のIgG値、CD4/CD8比から、低ガンマグロブリン血症を起こしやすい患者さんをあらかじめ把握できる可能性も示されました。今回の結果をもとに、患者さんごとのリスクに応じた長期合併症管理につなげていきたいと考えています。」(鈴木光太郎、城友泰、新井康之)